鍼治療の治療メカニズムは科学的にはまったく根拠がわかっていない
鍼治療の治療メカニズムは科学的にはまったく根拠がわかっていない / Credit:canva
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2021.11.02 Tuesday

「鍼治療のツボの正体」を解剖学的に示すニューロンが発見される (3/3)

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疑惑の多い鍼治療研究

鍼治療は本当に治療としての効果はあるのか?
鍼治療は本当に治療としての効果はあるのか? / Credit:canva

中国の伝統医療として普及している鍼治療ですが、実際そこに本当に効果があるのかについては、長らく疑問の声が上がっていました

ある医療について本当に効果があるか明らかにする場合、通常「二重盲検プラセボ対照試験」というものが実施されます。

これは新薬が開発された際、本当に効果があるかを調べるときにも利用される方法で、「本物の薬で治療する患者」と「偽薬で治療した振りをする患者」にグループを分けて、効果の違いを確認します。

こうした実験では、研究者自身が効果を証明したいと思ってやるため、結果にバイアスがかかってしまったり、患者に偽薬とバレてしまう恐れがあるため、医者も患者もどっちが本物でどっちが偽物かわからない状態で試験を行います。

そのため「二重盲検」と呼ぶのです。

こうした試験では、治療にはっきりとした効能がある場合、明確な違いが出ます。

鍼治療の効能に疑問が持たれた際も、こうした「二重盲検プラセボ対照試験」をしようと多くの研究が行われました。

しかし、偽薬と異なり鍼治療は、実際患者に鍼を刺さなければならないため、偽薬にあたる治療を用意することが非常に難しいのです。

そこで、研究者たちは、鍼を鍼治療が主張する「経絡のツボに届かないくらい浅く刺す」、あるいは「ツボからズレた位置に刺す」という方法でプラセボ対照を実施しました。

鍼治療の理論に従うならば、鍼の位置が浅くても、ツボからズレていても効果は出ないはずです。

しかし、この実験を行うためには鍼師の協力を得なければ実現できません。

このため、厳密に「二重盲検」を実施することが難しく、多くの研究があちこちで報告されましたが、かなりずさんな研究報告もあり、鍼治療効能の有効性についてはまったくマチマチな結果になってしまったのです。

つまり鍼治療のプラセボ対照試験による有意差は、科学的に示せていないのです。

こうした状況に対して、2003年にWHOは数多く報告されている鍼治療のプラセボ対照試験研究を評価した総括レポートを作成し発表しました。

『鍼-対照臨床実験に関するレビューと分析』という報告書では、293もの研究論文のデータを検討し、91の症例に対して鍼治療は効果が証明されたと結論付けられています。

WHOは2003年に鍼治療の有効性を認めるレポートを発表している
WHOは2003年に鍼治療の有効性を認めるレポートを発表している / Credit:depositphotos

しかし、このレポートでは、かなりいい加減な研究報告もレビューに含めていて、本当に鍼治療の有効性が示せているのかについて疑問が持たれています

特に報告書をまとめた責任者が、鍼治療を支持している北京大学統合医療研究所の謝竹藩(シェ・ジューファン)医師という、鍼治療に対して利害関係を持つ人物だったことも問題とされました

WHOと中国のつながりについては、この辺りでもすでに疑惑が持たれていたのです。

そんなわけで、鍼治療が本当に医療として意味があるのか? エセ科学なのではないか? という疑問は長らく医学研究者の間でも持たれていて、未だに解消はされていません。

今回の報告された研究についても、「そもそも『二重盲検プラセボ対照試験』で有意差が示せていないのに、メカニズムを探る研究に意味があるのか?」 とか、「鍼治療じゃなくてただの電気刺激に対する報告ではないのか?」という疑問の声が海外掲示板redditでは囁かれています。

今回の研究が、重大な発見であったことは事実ですが、研究者の主張する通りに鍼治療のメカニズムが一端でも解明されたかについては、少し疑問が残るかもしれません。

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