2013年に実証されて以来研究が続けられている5D光ストレージ。500TBの容量を持つという。
2013年に実証されて以来研究が続けられている5D光ストレージ。500TBの容量を持つという。 / Credit:University of Southampton
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Blu-rayの1万倍も保存できて無限の寿命を持つ「5次元光ストレージ」が登場

2021.11.08 Monday

2021.11.07 Sunday

5D data storage technology offers 10,000 times the density of Blu-ray https://newatlas.com/electronics/5d-data-storage-technology-density-blu-ray/
High speed ultrafast laser anisotropic nanostructuring by energy deposition control via near-field enhancement https://www.osapublishing.org/optica/fulltext.cfm?uri=optica-8-11-1365&id=462661

かつては活躍したCDやDVD、Blu-rayといった記憶媒体ですが、現在では使用頻度はかなり減っている印象があります。

その原因は1つにネット回線が飛躍的に向上したこともありますが、基本的なデータ容量が大きくなりすぎたこと、そして何より記憶媒体の寿命が短いことがあげられます。

一般的なCD、DVDの寿命はせいぜいが十数年程度とされています。

しかし、英国サウサンプトン大学では、フェムト秒レーザーというものを使ったBlu-rayの1万倍も密度の高い新しい記憶媒体を研究しています。

定期的にその成果が更新されているこの記憶媒体は、「5次元光ストレージ」と呼ばれていて、ディスク容量は約500TB、常温での寿命は実質無限だとされています。

この研究の詳細は、10月28日付で科学雑誌『OPTICA』に掲載されています。

5次元光ストレージとは?

現在ほとんどのデータはハードディスクや、ネット上のサーバーに保存されています。

しかし、ハードドライブの記録は、高温、湿気、磁場、機械的故障に脆弱です。

人類の叡智を本気で長期的に安定して保存し続けることを考えた場合、こうした機械的な記憶媒体は不適切でしょう。

とはいえ、CDやDVD、Blu-rayなどの記憶媒体も簡単に劣化してしまうため、長期的な情報の保存には向いていません。

そこでサウサンプトン大学で研究されているのが、まったく新しい「5次元ストレージ(five-dimensional (5D) optical storage)」という記録媒体です。

この技術では、CDサイズのディスクに約500テラバイトのデータが保存できるといいます。

これはBlu-rayディスクの約1万倍の記憶容量で、美術館や図書館の情報から、人のDNA情報まですべてを保存できる可能性があると研究者は話します。

5次元と言われるとすぐに時空間で考える人もいるかもしれませんが、次元とはある座標を示すために必要なパラメータ数のことです。

今回のストレージでは、通常の空間を示す3次元情報に加えて、レーザーの強度と偏光というパラメータも使って情報を書き込みます

そのため科学者たちはこれを「5次元光ストレージ」と表現しているのです。

この技術は、2013年に初めて実証実験が行われ、その際、サウサンプトン大学の研究チームはこの形式によって、300kbのテキストファイルの記録をすることに成功しています。

データは異なる3つのレイヤーに保存され、レーザーの強度と偏光によってエンコードされる
データは異なる3つのレイヤーに保存され、レーザーの強度と偏光によってエンコードされる / Credit:University of Southampton

この方法では、データはフェムト秒レーザーという、信じられないほど短く強力な光パルスを使用して書き込まれます。

これにより、ディスクのガラスにナノスケールの小さな構造を刻みつけ、保存するのです。

このストレージは3層構造になっていて、3つの空間次元があり、そこにレーザービームの強度と偏光を持った情報が記録されます。

こうして5次元の記録保存を行っているのです。

2015年には、研究チームは、この技術によって、世界人権宣言、欽定訳聖書(イングランド王ジェームズ1世の命令で翻訳された聖書)、マグナカルタ(イングランドの憲章)などの重要文章を保存することに成功。

世界人権宣言を保存した5D光学ストレージのディスク
世界人権宣言を保存した5D光学ストレージのディスク / Credit:University of Southampton

さらに、この記録媒体が、驚くほど熱に強く、室温なら実質無制限の寿命で記録を保持できることを示したのです。

このとき示されたディスク容量は360TBで、最大1000℃の熱安定性を持ち、190℃の環境でも138億年データ保存できる報告されています。

まさに無限の寿命を持つストレージです。

ただデータを書き込む速度については、これまであまり実用的なものとはなっていませんでした。

そこで今回の新しい研究は、近接場増強(near-field enhancement)と呼ばれる光学現象を使用して、十分な書き込み速度を達成したと報告しています。

これはフェムト秒レーザーによって直接書き込むのではなく、いくつかの弱い光パルスでナノ構造を作成します。

それにより1秒あたり、230kb(100ページ分のテキストデータに相当)のデータ書き込みを実現できるとのこと。

英国サウサンプトン大学のユーハオ・リー(Yuhao Lei)氏は次のように説明します。

「この新しいアプローチにより、妥当な時間で数十ギガバイトのデータを書き込むことが可能になりました。

これにより高精度のナノ構造でより多くのボクセルを書き込むことが可能となり、さらに書き込みに必要なエネルギーも削減できます」

最先端の5Dデータストレージ技術を使用して、約5GBの情報を保存した2.5cmのシリカガラスサンプル
最先端の5Dデータストレージ技術を使用して、約5GBの情報を保存した2.5cmのシリカガラスサンプル / Credit:University of Southampton

今回の実験では、5GBのテキストデータをCDサイズのシリカガラスディスクに保存し、100%読み取ることができることを実証しました。

このディスクは、現状500TBまでデータ保存が可能で、それはBlu-rayディスクの1万倍の記憶密度です。

まだ実験段階の技術ですが、宇宙の終わりまで人類の記録を残せる日が来るかもしれません。

【編集注 2021.11.8 9:00】
記事内容に一部誤字があったため、修正して再送しております。
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