人の動きの模倣学習によりAIがサッカーを習得!
人の動きの模倣学習によりAIがサッカーを習得! / Credit: Science X: Phys.org, Medical Xpress, Tech Xplore – AI system learns to play soccer from scratch(youtube, 2022)
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人の動きの模倣学習により「床でジタバタするだけだったAI」がサッカーを習得!

2022.09.24 Saturday

AIがサッカーを楽しむ日は近いかもしれません。

イギリスのGoogle系AI開発企業「DeepMind」はこのほど、コンピューター上のAIにサッカーを学習させることで、”ジタバタする幼児”から”熟達したサッカー選手”へと大変身させることに成功しました。

今回の研究では、モーションキャプチャした人間の動作をAIに模倣させるという新たな学習方法を採用しています。

従来の学習方法だと、どうしてもぎこちなく、ヘンテコな動きになってしまうのですが、この方法であれば、限りなく人間に近い動作が習得されるとのことです。

研究の詳細は、2022年8月31日付で科学雑誌『Science Robotics』に掲載されています。

 

Watch out, Messi: artificial intelligence has finally learned to play football https://www.zmescience.com/future/watch-out-messi-artificial-intelligence-has-finally-learned-to-play-football/ Watch how an AI system learns to play soccer from scratch https://techxplore.com/news/2022-09-ai-soccer.html From motor control to embodied intelligence https://www.deepmind.com/blog/from-motor-control-to-embodied-intelligence
From motor control to team play in simulated humanoid football https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.abo0235

歩けない状態から50日で立派なサッカープレイヤーに

AIに人間の動作を教え込むことは、現実でのロボット開発に大いに役立つ取り組みです。

しかし、大量のデータを学習させて、ある特定の動きを達成させる従来の方法では、AIの動作が不自然かつ奇妙なものになってしまいます。

これだと、より柔軟な動きを要するタスクには対応できませんし、現実のロボットに応用することも困難です。

こちらが、2017年に従来の方法で学習されたAIの動きになります。

従来の方法で学習された動き
従来の方法で学習された動き / Credit: Deep Mind – From motor control to embodied intelligence(2022)

動きとしては面白いですが、これではサッカーはできそうにありませんね。

そこで研究チームは、実際の人の動きをトラッカーで記録した「モーションキャプチャ(MoCap)」をAIに模倣させることにしました。

大量のデータを叩き込むのではなく、「見て真似よ」というわけです。

しかし、その取り組みは、ほとんどゼロからのスタートでした。

というのも、学習前のAIは、地面に倒れてジタバタするだけで、まともに立つことすらできません。

最初はまともに立つことすらできない
最初はまともに立つことすらできない / Credit: Science X: Phys.org, Medical Xpress, Tech Xplore – AI system learns to play soccer from scratch(youtube, 2022)

まさに、赤子にサッカーを教えるような難事業です。

チームはまず、スキル学習を3段階に分け、「低レベル(立ち上がる、走る)」「中レベル(ドリブル、シュート)」「高レベル(パス、ブロッキング)」の順に教えました。

人がサッカーをしているモーションキャプチャ(MoCap)を与えて模倣させ、同じ動きが自然にできるようになるまで訓練します。

実際の人の動きからサッカー選手らしい動きを学習
実際の人の動きからサッカー選手らしい動きを学習 / Credit: Deep Mind – From motor control to embodied intelligence(2022)

実際の訓練映像は、こちらの「Deep Mind」のページで閲覧できます。

これがクリアできたら、次に、ボールを追う・ドリブル・的に向かってシュートを模倣学習させました。

ここまでの学習をAIは3日で完遂しています。

中レベルの動きを学習
中レベルの動きを学習 / Credit: Deep Mind – From motor control to embodied intelligence(2022)

ソロでのプレイができるようになると、1対1での対戦シミュレーションを行い、相手ありきのより複雑な動作を学習させました。

その都度、実際のサッカー選手のモーションキャプチャを見せて、高度な動きを習得するよう促します。

そして学習開始から50日目には、2対2のチームプレーがこなせるまでに上達しました。

ここでは、味方とパスを回す、相手をブロッキングする、パスを受ける位置を予測するなど、意思決定を含む高度な動作が達成されています。

パッと見は、単なるコンピュターゲームのように見えるかもしれませんが、人が操作しているわけではなく、AIがすべて自分たちで判断してプレイしているのです。

ただし、研究チームも認めているように、これは実際のサッカーより大幅に単純化されたルールの中で行われています。

たとえば、ファウルやスローイン、ゴールキックなどはありませんし、何よりピッチの周りには、ボールが外に出ないよう「見えない壁」が張り巡らされています。

ガーターなしのボーリングのようなもので、AIがあらぬ方向にボールを蹴っても、場外にはならないシステムになっているのです。

実際と同じルールでプレイするには、さらなる学習が必要ですが、今回の新たな学習方法を取り入れることで、現実のロボットに応用可能な動作が獲得されるかもしれません。

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