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Credit: Rosalind M. Wright et al., Scientific Reports(2022)
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Mystery Of Eel Reproduction Unravelled In World First Discovery https://www.iflscience.com/mystery-of-eel-reproduction-unravelled-in-world-first-discovery-65781 Ancient mystery of European eel migration unravelled to help combat decline of critically endangered species https://www.gov.uk/government/news/ancient-mystery-of-european-eel-migration-unravelled-to-help-combat-decline-of-critically-endangered-species
First direct evidence of adult European eels migrating to their breeding place in the Sargasso Sea https://www.nature.com/articles/s41598-022-19248-8

2022.10.20 Thursday

世界初、ヨーロッパウナギの「産卵地までの移動ルート」の追跡に成功!

ヨーロッパウナギ(学名:Anguilla anguilla)は、欧州に分布する唯一のウナギであり、他種のウナギと同様に、海と川を行き来するライフサイクルを持っています。

一方で、ヨーロッパウナギがどこで産卵し、どのようにして繁殖地までたどり着くかは、長年の謎となっていました。

特に、本種は1980年代以降、個体数が著しく減少し、絶滅の危機に瀕しているため、ライフサイクルを解明して、保護策を打ち立てるのが、喫緊の課題となっています。

そこで、イギリス環境庁(Environment Agency, UK)を中心とする国際研究チームは、ヨーロッパウナギにGPSタグを装着して、海に放流し、産卵地までの移動ルートを追跡調査。

その結果、ヨーロッパウナギが産卵地に向かう経路や期間の直接的な証拠を、世界で初めて得ることに成功しました。

研究の詳細は、2022年10月13日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

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2000キロ以上の道のりを1年かけて移動していた!

ウナギは、産卵〜幼生の期間を「海」で、稚魚〜大人になるまでを「河川」で過ごすことで有名です。

たとえば、食用として大人気のニホンウナギは、日本から約2000キロ離れたマリアナ諸島の近海まで移動し、産卵することがわかっています。

ウナギの一般的なライフサイクル(左が海、右が大陸側の河川)
ウナギの一般的なライフサイクル(左が海、右が大陸側の河川) / Credit: ja.wikipedia

その一方で、ヨーロッパウナギは、古代から食用として利用される長い歴史を持つにも関わらず、産卵場所が不明のままでした。

(本種の繁殖地を調べる試みは、なんと紀元前4世紀にまで遡るという)

1920年代になって、ようやく北大西洋に広がる「サルガッソ海」が産卵場所らしいことがわかってきましたが、ヨーロッパからどういう経路で、どのくらいの期間をかけて移動するかは、明らかになっていませんでした。

本プロジェクトリーダーで、イギリス環境庁の研究員であるロス・ライト(Ros Wright)氏は「ヨーロッパウナギは絶滅の危機に瀕しているため、その完全なライフサイクルを解き明かし、産卵場所を保護する取り組みが必要だ」と話します。

サルガッソ海(メキシコ湾流、北大西洋海流、カナリア海流、大西洋赤道海流に囲まれている)
サルガッソ海(メキシコ湾流、北大西洋海流、カナリア海流、大西洋赤道海流に囲まれている) / Credit: ja.wikipedia

そこで研究チームは、2018年と2019年の11月に、大型のヨーロッパウナギのメス26匹にGPSタグを装着し、ポルトガルのアゾレス諸島から北大西洋に放流しました。

タグは6〜12カ月後に自動で外れて、その場所から位置データを送信するようプログラムされています。

ヨーロッパウナギの大型メスにGPSタグを付けて放流する様子
ヨーロッパウナギの大型メスにGPSタグを付けて放流する様子 / Credit: Rosalind M. Wright et al., Scientific Reports(2022)

その結果、26個中23個のタグからデータが取得され、うち6個がサルガッソ海にまで到達していることが判明しました。

また、これらのデータから、放流したすべてのウナギが一貫してサルガッソ海を目指して移動し、最終的な繁殖地に到達するまでに約1年かかっていることが明らかになっています。

加えて、タグが段階ごとに外れていくため、河川〜繁殖地までのおおよその移動経路も特定されました(下図を参照)。

アゾレス諸島の2カ所(丸)からタグのデータ送信位置(十字)、白丸は過去100年で稚魚が捕獲されたエリア
アゾレス諸島の2カ所(丸)からタグのデータ送信位置(十字)、白丸は過去100年で稚魚が捕獲されたエリア / Credit: Rosalind M. Wright et al., Scientific Reports(2022)

ヨーロッパウナギの移動経路および期間の直接的な証拠が得られたのは、今回が世界初です。

産卵後、サルガッソ海で誕生したヨーロッパウナギの幼生は、北大西洋海流(North Atlantic Drift)の様々なルートに乗って、イギリス近海やヨーロッパの海域に戻って来ると考えられます。

そして、幼生はシラスウナギ(Glass eel、ウナギの稚魚段階のこと、透明で全長5〜6センチほど)となって河川を遡上します。

北大西洋海流( North Atlantic Current)、メキシコ湾流から延長してヨーロッパ西岸に向かって流れる暖流
北大西洋海流( North Atlantic Current)、メキシコ湾流から延長してヨーロッパ西岸に向かって流れる暖流 / Credit: ja.wikipedia

本研究の成果は、ヨーロッパウナギの繁殖地を特定し、本種が急激に減少した原因を解明するとともに、保護活動を進める上でも非常に重要なデータとなるでしょう。

研究主任の一人で、ロンドン動物学会(ZSL)のマシュー・ゴロック(Matthew Gollock)氏は「ヨーロッパウナギの個体数は、きわめて低水準にあり、そのライフサイクルを理解することで、この種の危機的状況に対処するための保全策を練ることが可能です」と述べています。

研究チームは今後、GPSタグのデータをさらに詳しく分析して、移動ルートの理解を深めつつ、サルガッソ海での繁殖地の調査を進めるとのことです。

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