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実際にデング熱ウイルスに「被験者を感染」させて新薬の効果を検証! (3/3)

2023.11.02 Thursday

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検証のため被験者たちにデング熱ウイルスに感染してもらう

毒性が低いウイルスを使って当初はワクチンを作ろうとしていましたが、失敗して長期保存されていました
毒性が低いウイルスを使って当初はワクチンを作ろうとしていましたが、失敗して長期保存されていました / Credit:CENTER FOR IMMUNIZATION RCredit:

味方であるはずの免疫システムを、敵を呼び込むスパイに変貌させるデング熱ウイルスにどう対抗するか?

研究者たちは解決策としてワクチンの代りに抗ウイルス薬に活路を見いだしました。

ウイルスが細胞に感染して自己複製して増殖する過程を辿るには、必ず起こらなければならない生理学的な反応が存在します。

自動車工場で「とりあえず動く車」を作る場合、邪魔されてもなんとかなる工程と、邪魔されたら絶対に車が動かなくなってしまう工程が存在するのと同じです。

とりあえず動く車を作る場合、塗装・安全装置・カーナビなどの作成が邪魔されてもなんとかなります。

しかしエンジンを車体にはめ込む過程を邪魔されると、他がどんなに完璧でも車は動かせる状態にはなりません。

そこで研究者たちはデング熱ウイルスが自分をコピーするのに絶対に必要な2つのタンパク質の相互作用を邪魔できる化合物を探索しました。

するとマウスを使った動物実験によって「JNJ-1802」と呼ばれる化合物が、ウイルスにとって必須なNS3-NS4B相互作用を遮断できることが判明します。

自動車製造で例えるならば、「JNJ-1802」は完成したエンジンを車体に収めるために使うクレーンが動かないように固めてしまうコンクリートのような存在だったのです。

ただ「JNJ-1802」を薬として承認を受けるには、人間の被験者を使った試験が必須です。

新型コロナウイルスの場合、感染者が膨大な数に及んだため、新薬の調査は投与後に通常の社会生活を送る被験者を観察するだけ十分でした。

たとえば新型コロナウイルスのワクチンの有効性を試すには、一定数の健康な人に試作ワクチンを投与して感染拡大を待ち、ワクチンを投与していないグループとの差を調べれば、その効果を迅速に確認することができました。

また治療薬の場合も患者の確保は比較的簡単でした。

しかし蚊からヒトへ感染するデング熱ウイルスの場合には、同じように調べてはコストがかかります。

そこで研究者たちは1970年代にインドネシアで発生したデング熱株由来のウイルス(DENV-3)を人間の被験者に直接注射することにしました。

1970年代にインドネシアで発生したデング熱は比較的弱毒で主に発疹を引き起こします。

発疹は非常に深刻な痒みを伴う全身性のもので5~12日間続きますが、命にかかわることはありません。

実験薬が与えられたグループではデング熱の症状が大きく表れにくくなっていました
実験薬が与えられたグループではデング熱の症状が大きく表れにくくなっていました / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

研究ではまず被験者たちは2つのグループにわけられ、5日間にわたり一方は「JNJ-1802」そしてもう一方は「プラセボ(偽薬)」を服用した後に、デング熱ウイルスを含む注射を受けました。

その後、2つのグループは21日間にわたり「JNJ-1802」あるいは「プラセボ(偽薬)」を摂取し続けました。

すると運よく「JNJ-1802」を配られたグループでは容量に応じて効果を発揮し、最も多くの容量を摂取した10人のうち6人には感染の兆候がみられず、残りの4人のうち症状を発症したのは3人のみでした。

また重要な点として「JNJ-1802」の重大な副作用は認められませんでした。

この結果は、適切な量の「JNJ-1802」を前もって服用しておくとデング熱ウイルスに対する治療だけでなく、予防薬としても期待できることを示します。

欠点のあるワクチンが裏切りの可能性のある指導教官ならば、「JNJ-1802」は絶対に裏切らず敵の急所のみを攻撃し続ける戦闘ロボットと例えることもできるでしょう。

ワクチンと違って長期的な予防効果は見込めませんが、パンデミックのピークの少し前の段階で人々の手元に「JNJ-1802」があれば、ピークの山を低くし、医療機関のパンクを防ぐ助けになるはずです。

またマウス実験では「JNJ-1802」はデング熱ウイルスの4つの型全てに対してウイルス増殖を阻害する効果が示されおり、ワクチンのような免疫の裏切り(抗体依存性感染増強)が起こることはありませんでした。

研究者たちは現在、ラテンアメリカとアジアの10カ国で2000人近くの被験者を募集し、第2相の臨床試験が進行中であると述べています。

さらに現在多くの研究室では抗体依存性感染増強を起こさないワクチンの開発も進められており、上手くいけば長期的な防御を提供するワクチンと、短期的な予防と治療の両方を担当する「JNJ-1802」の2つを使って、デング熱ウイルスに対抗できるようになるでしょう。

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