野生のオーツ麦のように自ら地面の割れ目に潜り込むロボット種子
現在、世界中でよく食べられているのは、栽培用のオーツ麦(エンバク,学名:Avena sativa)です。
この祖先型(諸説あり)である野生のオーツ麦(オニカラスムギ,学名:Avena sterilis)の小穂は、「水分を吸収して自ら土に埋まる」という巧妙な種子運搬システムを持っています。
その小穂には、2本の長いトゲ状の突起「芒(のぎ)」があります。
小穂が土に落ちると、小穂は土から水分を吸収。この水分によって芒はねじれて回転し、小穂を地面の割れ目に潜り込ませます。

IITのフィオレロ氏ら研究チームは、この野生のオーツ麦のメカニズムを模倣し、様々な種類の種子を土に埋めるためのデバイスを開発することにしました。
その結果として誕生したのがロボット種子「HybriBot」です。
このロボットの核となるのは、種子と少量の肥料であり、小麦と水で作られたカプセルに閉じ込められます。
このカプセルは、水に溶けない環境に優しいバイオポリマーであるエチルセルロースでコーティングされます。
そして、そこに野生のオーツ麦の小穂から採取した本物の芒をくっつけるのです。
このロボット種子の重量は60mgであり、これは野生のオーツ麦の小穂の約3倍の重さです。

実験では、開発されたロボット種子は、野生のオーツ麦と同じように、水分を吸収して地面の割れ目にを潜り込むことができました。
製造プロセスは、かなり面倒で時間がかかるように思えます。
しかし研究チームは、「自動化された組み立てシステムにより、数十万個のロボット種子を素早く、安価に製造できるはずだ」と述べています。
そして何より、「すべての材料が生分解性であり、これを食べる動物に対しても無害である」ことが重要なのだとか。
もしかしたら将来、効率的に作物を作ったり森林を再生したりするのに、このロボット種子が役立つのかもしれません。