AIが生成したものをAIが取り込んで劣化していく「AI狂牛病」
生成AIモデルをトレーニングするためのデータは、インターネットから取得されることが少なくありません。
そのため現在のように合成データがネット上で急増すると、「AIモデルが過去に作られた合成データを取得 → それを元にAIモデルが合成データを生成 → 次世代AIモデルがその合成データを取得」というループが発生する可能性があります。
今回、バラニューク氏ら研究チームは、そのようなループの結果何が起きるかを、画像生成AIを用いて調査しました。
![AIによる「学習→生成→学習」のループが発生](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/a31de2e4cac1489becdb10d292822a7f-900x600.jpg)
その結果、ループが繰り返されるにつれて、AIモデルが生成する画像の質が劣化していくと分かりました。
例えば、あるケースではループが繰り返されるうちに、生成された人物画像には、格子状の模様が強く現れるようになりました。
![ループにより生成される人物画像に格子状の模様が強く入っていく](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/c43fe7e6cb42114faa9f705577207d93-900x383.jpg)
第1世代の生成画像は本物と見分けがつかないのに対し、第9世代の生成画像の方が明らかに画質が劣化してしまっています。
一方で、データの品質を維持しようとした場合、ループによって多様性が失われることが分かりました。
![ループにより、生成される人物画像の多様性が失われる](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/0f5ae56a8c8d6122749146a0ca6885dd-900x331.jpg)
AIモデルは品質を維持するのに効果的なデータを選別するようになり、結果として生成される画像は、世代を重ねるごとにどんどん似てくるのです。
「手書きの数字」の画像を使ったテストでは、ループによって数字が徐々に判読不能になりました。
![ループにより手書き文字の画像が崩れていく](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/1f887edf51232ac8c5a54651325954ed.jpg)
この悲惨な現象は、ウシにウシを与えることで生じた「狂牛病の蔓延」に類似していることから、研究者は「モデルオートファジー障害(Model Autophagy Disorder (MAD))」と呼んでいます。
現在、そして将来のAIの世界では、AIにAIを与えることで、まさに「AI狂牛病」とも言える現象が生じていくかもしれません。
(※「AI狂牛病」という名称は存在しません。研究者は狂牛病との類似性を指摘していますが、研究者はこの現象をMADと名付けています)
バラニューク氏も、この課題を何世代にもわたって放置すると、「インターネット全体のデータ品質と多様性が損なわれる」と指摘しています。
「生成AIモデルの開発」と「合成データの生成」が盛んに行われているまさに今、「AI狂牛病」は静かに広がっているのかもしれません。