むしろ寝ないほうがいい?うつ症状は徹夜すると改善するという研究

science_technology 2018/02/16

Sleeping...
一般的にうつ症状を持つ人は、睡眠障害を持っていることが多いといわれています。今回ご紹介するのは、薬も効かない双極性障害の患者を、寝かせないことで治すという治療法です。一見従来の説とかけ離れていて信じがたいですが、果たしてどういった理由なのでしょうか。

ウェイクセラピーという治療法があります。患者を夜中も寝かせないという治療法で、通常は薬剤としてのリチウムの投与と光を浴びさせる治療を併用して行われます。こういった治療はまとめて「クロノセラピー」と呼ばれ、患者の鈍った体内時計を起動させる効果が見込めます。

Credit: Pixabay

1970年代、ドイツのバークハード・プラグは、計画的に抑うつの患者から睡眠を奪うと、一晩の徹夜で抑うつ状態から抜け出すことを確認しました。ミラノにあるサンラファエル病院の精神科医・フランシスコ・ベネデッティは、1990年初期にこの治療法に注目しました。当時はプロザックが出始めた時期で、抑うつ病の治療に革新がもたらされましたが、双極性障害(躁うつ症)の患者に、抗うつ剤はあまり効きませんでした。そこで彼は、ウェイクセラピーに関する論文を読み、患者に試して見ました。すると有望な結果を得た彼は、さらにこの治療法を効果的にするために他の論文を当たった結果、リチウムの服用が睡眠抑制の効果を高める可能性があることがわかりました。試してみた結果、リチウムを飲んだ65%の患者で効果の促進が見られました。しかし、睡眠抑制の効果は昼寝をしただけで消えてしまいます。そこで、患者を寝かせないための方法として、強い光を当てることにしました。これは、航空医学からヒントを得たもので、リチウムの投与と同等の効果がありました。

実際の治療では、患者は1日おきに徹夜し、朝、30分間光を浴びます。徹夜した次の夜は好きなだけ寝ることができます。これを2週間続けます。1996年にこの3つのクロノセラピーを紹介してから、双極性障害を持つ患者1000人近くにこの治療法が行われています。結果は顕著で、最新の結果によると、薬の効かない患者の70%が最初の1週間以内に反応が見られ、50%の患者で1ヶ月後も持続的な改善が見られました

一晩徹夜することで見られるこの効果はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。その仕組みははっきりとはわかっていませんが、最新の研究により明らかになりつつあります。

Credit: Pixabay

抑うつ状態の人々の覚醒と睡眠時の脳の活動は、健康な人たちとは違います。私たちは、昼間は体内時計により覚醒を促す信号を受け取ります。夜はそれとは反対に、睡眠を促す信号を受け取ります。抑うつや双極性障害の場合、その変動が平板化、あるいは消え去りるのです。

人の眠気は、アデノシンという物質が脳内のアデノシン受容体と合体すると誘発されるといわれています。アデノシンとは昼間の内に作られ、神経細胞のアデノシン受容体とともに眠気を引き起こす神経伝達物質で、たとえばカフェインは、このアデノシン受容体の活性化を抑えることで眠気を抑えています。

抑うつ状態の人が徹夜で症状が治る理由は、病気で鈍くなったこのシステムを突き動かすために、睡眠圧力、つまり脳で放出されているアデノシンをもっと必要としているからではないか、と考えられています。

たとえば抑うつ状態のマウスにアデノシン受容体を活性化する物質を与えると、抑うつ症状が改善しました。つまりアデノシン受容体が活性化して睡眠圧力が高くなった結果、抑うつ症状が改善されたということが示唆されているのです。

抑うつ症状と睡眠リズムはどうも関係があるようです。結局毎日規則正しく生活し、入眠時間や起床時間を意識的にセットし、運動の習慣もつけるのが一番良いということですね。しかし、徹夜で抑うつ症状を治すこの方法は副作用の危険もなく、もっと広まってもいいのではないかと思われます。

 

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via: pennmedicine, qz/ translated & text by Nazology staff

 

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