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なんで原子核より高密度な「中性子星」が成立するの?「強い核力」の謎に迫る (3/3)

2021.01.27 Wednesday

2020.03.05 Thursday

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粒子加速器のデータアーカイブから見つけた事実

中性子星のような極端に核子間の距離が近い環境は、容易に実現できるものではありません。

しかし今回の研究者たちは、「粒子加速器の実験がこの環境を実現している」と考えました。

粒子加速器は高エネルギーの電子を、原子などにぶつける実験をしています。このとき、原子は破壊され、陽子と中性子など一対の核子を放り出す場合があります。

この核子のペアは非常に近距離にある可能性もあります。

画像
Credit:depositphotos

「どれだけ激しくぶつかったか、ぶつけられたものがどれだけの勢いで出てきたかを調べることで、飛び出した対象の最初の状態を再構築できます」と研究者は語ります。

そこで、彼らが利用したのが、面白いことに過去の粒子加速器で行われた実験データのアーカイブでした。ここで利用されたのはジェファーション研究所で2012年まで使われていた粒子加速器CLASのデータです。

この実験データには、測定した過去の研究者たちが直接利用していなかった膨大なデータも埋もれているのです。

この施設で、原子核に衝突した電子の数は実に4億個にも達していました。この膨大なデータ・アーカイブから、今回の研究者たちは飛び出した陽子や中性子のペアを見つけ出し、その運動量と相互の推定距離から、中性子星コアの密な状態に近いものを洗い出して調べ上げたのです。

その結果、研究者たちは陽子と中性子が極近距離の場合に働く反発力だけでなく、陽子と陽子、中性子と中性子の場合に強く反発する相互作用についても、値を導き出すことに成功しました

強い核力が近距離で斥力に変わることは、理論的に予想されていたことでしたが、実際に測定値として得られたことは驚くべきことです。

さらにこの結果は、強い核力の反発作用が予想より単純なものであることも示していると言います。

これまで中性子星の内部などを理解するためには、中性子と陽子を作り上げている素粒子クォークと、強い核力を伝達するグルーオンの複雑な相互作用を考慮してモデル化しなければならないと考えられていました。

今回の研究者たちは、今回のデータがあれば、そんな複雑なモデルを利用せずとも、もっと単純な形で中性子内部を説明できるかもしれないと話しています。

中性子星という天体の話をするのに、10-15メートル以下の世界の振る舞いを理解しないといけないなんて、本当に物理の世界は奥が深いですね。

「量子のゆらぎ」によって真空中でも熱が伝わると判明

reference:MIT News,medium,JAXA,東京大学 / written by KAIN

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