50年間氷漬けにされていたペニシリンの元祖であるアオカビが再び蘇った背景とは?
50年間氷漬けにされていたペニシリンの元祖であるアオカビが再び蘇った背景とは? / Credit:インペリアル・カレッジ・ロンドン
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世界初の抗生物質「ペニシリン」の元になったアオカビのDNA配列がやっと解読される!発見当時から”遺伝子が変異していた”という驚きの結果

2021.01.27 Wednesday

2020.09.30 Wednesday

sciencealert https://www.sciencealert.com/scientists-have-now-sequenced-the-genome-of-alexander-fleming-s-penicillin-mould, sciencedaily https://www.sciencedaily.com/releases/2020/09/200924141545.htm, Scientific Reports https://www.nature.com/articles/s41598-020-72584-5

世界初の抗生物質「ペニシリン」の元となったアオカビのDNA配列がやっと解読されました。

9月24日に『Scientific Reports』に掲載された論文によれば、今までこのアオカビのDNA配列は誰にも調べられておらず、ある意味放置されていたとのこと。

しかし解読の結果、驚くべき事実が判明しました。

オリジナル型と大量生産型

中央のアオカビが分泌するペニシリンのせいで周囲の細菌が駆逐されている
中央のアオカビが分泌するペニシリンのせいで周囲の細菌が駆逐されている / Credit:Tom Volk’s Fungus

ペニシリンは世界初の抗生物質として1928年にイギリスのアレクサンダー・フレミングによってアオカビから抽出されました

抗生物質には生産者であるアオカビ以外の細菌を殺す能力があり、アオカビはこの力を使って他の細菌を殺して、栄養分の独占や感染防御を行います。

フレミングと彼に続く研究者たちは、このアオカビの「細菌を殺す力」を薬として人間に注射することを思いつき、結果として数え切れない人間を感染症から救うことに成功したのです。

しかしそんな人類にとって恩恵をもたらしたアオカビですが、肝心のDNA配列がなんと未だに解読されていませんでした。

そこでインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者たちは今回、改めてアオカビのDNA配列を解き明かしました。

結果、フレミングがペニシリン発見当事に実験に用いたイギリスのアオカビと、アメリカに輸出され大量生産のために使われていたアオカビは、遺伝的にいくつかの相違点があったことが判明します。

また主な相違点は、ペニシリンを生産する遺伝子に集中していました。

アメリカに輸出され、商業的な大量生産に使われていたアオカビはペニシリン生産にかかわる遺伝子を染色体内部に2重3重と重複させていただけでなく、生産を調節する遺伝子にも変異がみられました。

これは、アメリカでペニシリンを大量生産する過程で、より多くのペニシリンを作る株が選別されたためであると考えられます。

この結果は、もとは1種類だったアオカビが、人間の都合で2種類に枝分かれし、それぞれ異なる手順でペニシリンを精製するようになったことを意味します。

牛や豚と同じように、アオカビも家畜化されていたと言うこともできるでしょう。

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