樹木年輪から判明。巨大太陽嵐の原因は「太陽フレアの連続発生」だったかも
樹木年輪から判明。巨大太陽嵐の原因は「太陽フレアの連続発生」だったかも / Credit:The University of Queensland_Radioactive traces in tree rings reveal Earth’s history of unexplained ‘radiation storms’(2022)
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樹木年輪から過去1万年で6回の巨大太陽嵐の痕跡を発見! スーパーフレアが原因ではなかった!? (2/3)

2022.10.29 Saturday

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過去に発生した巨大太陽嵐「ミヤケ・イベント」

2012年、日本・名古屋大学に所属する三宅芙沙(みやけ ふさ)氏ら研究チームは、樹木年輪を調査することで、過去に巨大太陽嵐が発生していたことを発見しました。

太陽フレアによって高エネルギーの放射線が大気圏上層に到達すると、窒素原子が放射性炭素(C14)に変化します。

このC14は大気や堆積物、人間、動物だけでなく植物にも取り込まれます。

つまり樹木年輪に含まれるC14の量を調べることで、該当する年の太陽嵐の有無やその規模が分かるというわけです。

名古屋大学太陽地球環境研究所の三宅芙沙氏と増田公明氏
名古屋大学太陽地球環境研究所の三宅芙沙氏と増田公明氏 / Credit:三宅芙沙(名古屋大学)_屋久杉年輪の炭素14分析からわかった二度の宇宙線量の急増(2013)

三宅氏は当時の研究により、西暦775年にC14濃度が急激に増加していたことを見つけ、この時に特殊な巨大太陽嵐が発生していたと結論づけました。

この方法と発見は考古学者たちにとって革新的であり、ポープ氏は同様の方法で発見された特殊な巨大太陽嵐の事例を「ミヤケ・イベント」と呼んでいます。

では、もっと多くの樹木年輪を調査することで、別の「ミヤケ・イベント」を発見できるでしょうか?

年輪年代学では、別々の樹木であっても、同じ地域・時代に成長していれば年輪パターンが類似することが知られています。

つまり、さまざまな時代の樹木の共通部分を見つけて、つなぎ合わせるなら、1本1本の寿命は短くとも、何千年にもわたる「樹木年輪の記録」が作れます。

現在では、遺跡から発見された古い木材を活用することで、過去1万3000年間の年輪記録を確認できます。

そして三宅氏による最初のミヤケ・イベント発見後、多くの研究チームが、上記の年輪記録を利用してミヤケ・イベントの探索を行ってきました。

将来、ミヤケ・イベントが発生するなら地球は壊滅状態になるかも
将来、ミヤケ・イベントが発生するなら地球は壊滅状態になるかも / Credit:Canva

その結果、西暦775年以外にも、西暦993年、紀元前663年、紀元前5259年、紀元前5410年、紀元前7176年にミヤケ・イベントが発生していたと判明。

過去1万年間に合計6回の巨大太陽嵐が発生していたのです。

1000~2000年に1回、ランダムでミヤケ・イベントが発生していたことになります。

仮に現代でミヤケ・イベントが発生すれば、電子機器や通信システム、人工衛星は壊滅するでしょう。

ミヤケ・イベントが発生する次のタイミングを推測して防衛するためには、ミヤケ・イベントの原因を明らかにしなければいけません。

科学者たちの予想どおり、やはり大規模な太陽フレア「スーパーフレア」が原因なのでしょうか?

次ページ過去に発生した「ミヤケ・イベント」の原因は、スーパーフレアではなかった

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