人工衛星が250個破壊されるだけで完全な軌道閉塞が発生すると判明!
人工衛星が250個破壊されるだけで完全な軌道閉塞が発生すると判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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人工衛星が250個破壊されると人類は完全に地球に閉じ込められてしまう!

2023.07.17 Monday

軌道閉塞は避けられない未来なのかもしれません。

スペインのマラガ大学(UMA)で行われた研究によって、大国同士が対衛星兵器を打ち合う「宇宙戦争」が起きた場合、わずか250個の人工衛星が破壊されただけで人類の宇宙への道が閉ざされてしまう可能性が示されました。

これまで人工衛星の破壊によって発生するスペースデブリが一定のしきい値を超えると、新たな人工衛星の破壊とスペースデブリの再発生のサイクルが止まらなくる「ケスラーシンドローム」と呼ばれる現象が起こり、人類が宇宙にアクセスするのを不可能にすると考えられていました。

今回の研究では対衛星兵器を使った宇宙戦争がシミュレーションされ、地球軌道が予想よりはるかにデブリに対して脆弱であることが判明しました。

現代の戦闘テクノロジーが宇宙の静寂を破る瞬間、そこにはどんな未来が待ち受けているのでしょうか?

研究内容の詳細は『Defence and Peace Economics』にて論文タイトル「Star Wars: Anti-Satellite Weapons and Orbital Debris(宇宙戦争:対衛星兵器と軌道デブリ)」として公開されています。

Space debris: a quantitative analysis of the in-orbit collision risk and its effects on the earth https://www.eurekalert.org/news-releases/994289
Star Wars: Anti-Satellite Weapons and Orbital Debris https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10242694.2023.2208020

たった1発の対衛星兵器でも悪影響は1000年続く

たった1発の対衛星兵器でも悪影響は1000年続く
たった1発の対衛星兵器でも悪影響は1000年続く / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

2021年、ロシアの対衛星兵器の試験で、旧ソ連時代に打ち上げられた軍事衛星(コスモス-1408)が破壊されました。

重量1750kgの破壊された衛星は、10cmを超える大きなデブリを1500個以上うみだし、さらに小さなデブリ数十万個が、高度300キロから1100キロの範囲に雲のように広がったと推定されています。

ロシアが対衛星兵器をテストした理由は、現代の高度な軍事技術の全てが衛星を利用しているからです。

ミサイルの精密誘導、無人兵器やドローンの操縦、さらにあらゆる情報通信システムにとって衛星の存在は必要不可欠です。

近年になって米国やロシア、中国で宇宙軍の創設されたという報告があるのも、自国の衛星を守り敵国の衛星を破壊することが、戦争に勝つ最短ルートになっているからです。

軌道上の物体数は急速に増加している
軌道上の物体数は急速に増加している / Credit:Anelí Bongers and José L. Torres . Star Wars: Anti-Satellite Weapons and Orbital Debris . Defence and Peace Economics (2023)

一方で、宇宙空間の軍事化と兵器化は軌道上のゴミの増加と密接に関係しており、衛星や宇宙ステーションの安全性を脅かしています。

そこで今回、研究者たちは宇宙における戦争が軌道の安全性と衛星に与える影響について、精緻なシミュレーションを行うことにしました。

調査にあたっては2つの現実的なシナリオがシミュレートされました。

1つ目は単一の対衛星兵器が試験的に発射された場合の影響。

2つ目は大国間の戦争により、双方の衛星の10%が破壊された場合の影響です。

またシミュレーションではNASAの標準破壊モデルが利用されました。

この標準破壊モデルは既存の観測結果や実験室での測定結果をもとに作成されており、10cm以上の大きなデブリが1個できるとき、1~10cmの間の小さなデブリが50個できるとされています。

より具体的には10トンの衛星が1機破壊されると10cmを超えるデブリが5000~1万5000個、1~10cmのデブリが25万~75万個作成されます。

研究者たちがシミュレーションを行った結果、単一の衛星兵器のテストであっても1cmを超えるデブリが新たに10万2000個発生し、デブリの発生地点が高高度だった場合には、その悪影響が消えるのに1000年以上かかることが示されました。

より具体的には、対衛星兵器を1つテストするごとに、およそ4.5年に1個の割合で被害に合う衛星が増えることになりました。

4.5年に1個なら、テストの影響はあまり大きくないように思えます。

しかし影響が1000年続くため、最終的に破壊される無関係な衛星はずっと多くなります。

たった1回のテストにしては、その代償はあまりにも重すぎるでしょう。

ですが大国間の宇宙戦争では、より黙示録的な結果が得られました。

次ページ軌道閉塞を起こすには些細な宇宙戦争で十分だった

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