・カマキリが熱帯魚のグッピーを捕食する姿が初めて観察された
・カマキリの眼は物体の「動き」に引き寄せられる特性があるため、グッピーの大きな背びれの動きに惹かれたと見られる
・カマキリは、獲物を捕まえるというタスクを達成するために、学習を通じて「狩猟の新手法」を編み出す能力を持つ可能性がある
鋭い鎌に、大きな眼が特徴的なカマキリ。ふつう彼らが餌にするのは昆虫ですが、ある「気まぐれなカマキリ」が、魚の味を覚えてしまったようです。
インドとイタリアの研究チームが、熱帯魚のグッピーを捕食するカマキリを初めて観察。ハラビロカマキリ属の一種として知られるこのオスは、インド南西に作られた人口池で泳ぐか弱いグッピーに襲いかかり、ペロリと食べてしまいました。体長6センチほどのカマキリが体長2〜3センチのグッピーを食べたというのですから、なんとも衝撃的です。この研究は、 “Journal of Orthoptera Research”に掲載されています。
https://jor.pensoft.net/articles.php?id=28067
さらに、カマキリが魚を食べたのは一度ではありません。なんと5夜連続で屋上庭園に作られた人工池を訪れ、水面に浮かぶスイレンやボタンウキクサの葉の上から、夕食の魚を「釣った」のです。それも一晩で2尾、合計で9尾ものグッピーを食べたとのこと。完全に味をしめています。
庭園には、ハエやその他の昆虫など、カマキリが餌にできる食べ物はグッピー以外にもたくさんいました。それにもかかわらず、この血気盛んなハンターは、毎夜この池へ戻って来ては、ハエではなく魚でお腹を満たしていたのです。
この発見は一匹のカマキリで観察された行動に過ぎませんが、研究を率いたロバート・バティストン氏は、「カマキリがどのように獲物を捕まえるか」を広く理解する上でとても有益だと考えています。
獲物を求めてうろつく時、カマキリの眼は物体の形や色よりも「動き」に引き寄せられます。おそらく、今回のカマキリの場合、グッピーの旗のように大きな背びれの急な動きに惹かれたのだと考えられます。
一方で、水中で暴れるグッピーを捕えることは、空中ほど容易ではありません。カマキリが繰り返し狩りに成功できたことは、カマキリの視覚と狩猟能力に予測できない適応性があることを示唆しています。
実のところ、カマキリは「食べられるものなら何でも食べてしまう」大食いキャラとして知られています。たとえば、大きなカマキリにとって、ハチドリなどの小型の鳥は定番メニューの一つです。カマキリと大きな獲物(タランチュラ、ヘビ、ハツカネズミ、トカゲなど)の対決シーンは、よく映像にも撮られています。ただし、これらの多くは自然には発生しないような人工的な状況下で、カマキリに獲物を捕まえるように仕向けるものです。狩りの達人であるカマキリにとって、ケージの中で獲物と戦って食べてしまうことは朝飯前なのです。
一方で、野生の中にいるカマキリは、自分より大きな獲物に近づくことにはとても慎重です。しかし、お腹が空いている時は例外。躊躇することなく獲物に迫っていくのが、カマキリが「天性の狩人」たる所以です。
「大きなメスのウスバカマキリが、片脚でミツバチを捕まえるのを目にしたことがあります。ミツバチは必死に抵抗し針でカマキリを殺そうとしましたが、カマキリにもう一方の脚で捉えられてしまいました。勝利したカマキリは、約一時間半を掛けて、ゆっくりと優雅にこの『スパイシーな贅沢ランチ』を楽しんでいました」と、バティストン氏は説明しています。
今回の研究からは、カマキリが獲物を捕まえるというタスクを達成するために「新しい手法」を編み出す能力さえ持っていることが窺えます。もしかしたら、「狩りの達人」たちはもっと複雑な認知目標を達成する力を持っているのかもしれないのです。能あるカマキリは、秘められた「鎌」をまだどこかに隠しているのかもしれません。
via: livescience / translated & text by まりえってぃ