月表面に謎の重力異常! 原因は月の内部に残った◯◯だった?

space 2019/06/12

GRAIL

Point
■NASAの行った月の重力分布測定で、太陽系最大級とされるクレーター『月南極エイトケン盆地』から謎の大質量が検出されている

■今回の研究では、その調査データを解析し、月の南極下に四国の倍以上の大きさの金属が埋められている可能性が報告された

■これは大クレーターを作り出した小惑星の核が、マントルに溶けずに月マントルの上部に吊り下げられるように残存している可能性を示している

月表面の重力分布は一様ではない

2011年頃にNASAが月の重力分布を測定したところ、地球からは見えない位置にある月の巨大クレーター周辺に異常質量が確認できるという報告が発表された。

そして今回その測定データを解析したところ、なんとクレーター下部には日本の四国の倍に匹敵する、金属塊が存在するようなのだ。

この研究はアメリカ合衆国テキサス州ベイカー大学の地球物理学の研究チームより発表され、Geophysical Research Lettersに掲載されている。

Deep Structure of the Lunar South Pole‐Aitken Basin
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2019GL082252

南極エイトケン盆地

Credit:NASA/GSFC/Arizona State University

上のカラフルな写真は『南極エイトケン盆地』と呼ばれる月の大クレーターを写したものだ。色は高低差を表しており、青いほど低地であることを示している。

月の地名にはその形成過程によって命名規則があり、クレーターについては『盆地』と呼ばれる。

月の地図を見たことがある人は、月の地名に『海』と表現される場所が多いことに気付いているかもしれないが、月で『海』と表現される場合、それは溶岩が吹き出してクレーターを埋め平原に変わった場所を表している。

そんなルールのため、なんだか野暮ったい地名にも聞こえたとしても、月のエイトケン盆地は太陽系最大規模のクレーターだ。

その大きさは、もっとも幅の広い場所で2,000km、深さは数kmに達するという。本州が約1500kmであることを考えると、いかにとんでもない大きさであるかがイメージできるだろう。

そんなクレーターの周辺に重力異常が認められるというのだ。

この場所は月の南極部分にあたり、地球から直接見ることはできない。しかし、地球からは見えないそんな場所の地下に大質量があると言われると、なんともロマンを感じずにはいられない

その質量を計算すると、ハワイのビッグアイランドの5倍に匹敵するサイズの金属の塊が埋まっているような状態だという。

ハワイのビッグアイランドと言われても日本人にはピンとこないが、ビッグアイランドは日本の四国の半分ほどと表現されることがあるので、日本人向けに表現するならこれは四国の倍以上の金属塊ということになるだろう。

たしかにとんでもない話なのだ。

一様ではない月の重力分布

月の重力分布 赤いところでは重力が強い。右が月の裏側に当たる。 Credit:JAXA 「かぐや」

「重力の異常だとかいうけれど、そもそもそんなものどうやって測ったんだよ?」と思う人もいるかも知れない。

月の重力分布に異常があるという事実については、NASAの研究チームなどにより68年頃から報告されていた。ただ具体的にどこに異常があるのか? 理由は何なんなのかについては明らかになっていなかった。

この調査を行うために打ち上げられたのが、NASAの月調査機グレイルだ。

これは2機1対の調査機で、月の周囲をまわりながらお互いの距離の差を測定している。重力が異なれば当然軌道や高度といった位置情報に変化が生まれるため、それを元に重力の分布を測定しているのだ。

ちなみにグレイルは2012年12月に調査を終了し、月面へ衝突させて廃棄されている。なんとも豪快な調査終了だ。彼らもまた月のクレーターになってしまったようだ。

重力の分布調査は月の表面の地形や、内部構造を知るための重要な資料になる。地形が盛り上がっている場合には一般的に重力は強くなり、くぼ地では弱くなる。また、マグマが結晶化した鉱脈などが発生している場合、その周辺の重力は強くなる。

グレイルは月の重力異常について、南極部分で特に乱れがあることを発見している。

月の重力異常や地質、地形については、日本も月探査機のかぐやを打ち上げて調査を行っている。こちらの調査結果では月の『海』に当たる場所に強い正の重力異常があることを確認している。

月の内部構造

月にも地球同様の、コアやマントル、マグマといった内部構造を持っているものと考えられている。

Credit:sservi.nasa

重力は一般的にマグマが固まって酸化鉄を形成した場所では大きくなることが確認されている。

今回の重力分布調査に関する解析研究では、月の南極下部にある重力異常について、巨大な金属の塊があることを示している。そしてこれはマントルの上部に吊り下げられるような形で存在しているようだ。

巨大クレーターの真下に位置していることからも、この大質量の正体は、40億年前に月へ衝突し太陽系最大級のクレーターを作り出した小惑星の残骸と考えられる。そのコアが、マントルに溶けずに未だ月の地下深くに保存されているのだ。

もちろんこれがマグマの固まった高密度の酸化鉄の塊である可能性も残っている。しかし、それがこの場所に密集する理由は、小惑星の衝突がマントルを押し上げて高密度のマグマを噴出させた可能性が高い。

太陽系最大のクレーターを作るような小惑星は、衝突するまでの間に、おそらく太陽系のあちこちに様々な影響を与えた可能性が高い。しかし、そうした痕跡はほとんど失われてしまっている。

このクレーターの重力異常は、そんな失われた太古の記録の一旦なのだ。

この重力の解析から、より詳細な月の形成過程が明らかになっていくかもしれない。

reference:phys,nasa,jaxa/ written by KAIN

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