HIVウイルスの完全除去に世界で初めて成功 マウスで実験

biology 2019/07/04
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Point

■HIVに感染した動物のゲノムからHIVを除去する治療法が発表された

■ARVにLASER ARTという処理を加えることで薬剤が細胞膜を通過し、その結晶構造によって長期的効果が望める

■CRISPR-cas9という遺伝子操作技術によって、ARVが取り逃した細胞からHIV遺伝子を切り取る処置を行い、ARVの効果を補填

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ついに抜本的治療法なるか?

米テンプル大学医学部の研究チームが、HIVに感染し得た動物のゲノムからHIVを除去する治療法を発表した。論文は、雑誌「Nature Communications」に掲載されている。

Sequential LASER ART and CRISPR Treatments Eliminate HIV-1 in a Subset of Infected Humanized Mice
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10366-y

既存のARV治療の限界に挑む

強力な抗レトロウイルス薬(ARV)の開発によって伝搬の可能性は劇的に減ったものの、現行の治療法に限界があるのも事実だ。

ARVは、正常な細胞を感染させようと活発に働いている最中のウイルスに対しては高い効果を発揮するが、活動休止中のウイルスにはあまり効き目がない。

しかもHIVウイルスは、ARVのこの特性を「学習」するように進化を遂げつつあり、いずれ変異してARV耐性を獲得する恐れさえあるという。

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さらに人間の免疫が弱まった途端、潜在するウイルスが複製を再開するというパターンもある。

ウイルスの活動状態にかかわらず一つ残らず駆逐することができれば、それはARVよりはるかに優れた解決法になること間違いなしだ。

そこで今回研究チームは、29匹のマウスを対象に、ARVと遺伝子操作技術を組み合わせた治療を施す試験を行った。

すると驚くことに、治療を受けたマウスの3割から、ウイルスが跡形もなく消えたというのだ。

「LASER ART」と「CRISPR-cas9」の見事なコンビネーション

研究チームははじめに、LASER ARTという処理を加えたARVを用いて、血中で活発に複製しているウイルスの数を減少させた。

LASER ARTは従来のARVに微調整を加えて結晶構造に変化させることで、脂溶性の粒子の中に閉じ込める技術である。

これにより、ウイルスが隠れて存在しやすい肝臓・リンパ・脾臓などの組織の細胞膜を薬剤が通過できるようになる。こうなればしめたもので、後は細胞の酵素が薬剤を放出してくれるのだ。

しかも結晶構造のおかげで薬剤が従来より遅いスピードで放出されるため、出現から複製までの数ヶ月間にわたって、たとえ活動していない間であってもウイルスを殺しつづけることができる

これが、数日から数週間しか効き目がない従来のARVとの大きな違いだ。

次に研究チームは、CRISPR-cas9という遺伝子操作技術を使って、血中を循環するHIVに感染した細胞のうちARVが取り逃した細胞からHIV遺伝子を切り取った。

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過去にもCRISPR-cas9を用いてHIV遺伝子を切り取ることに成功していたが、HIVウイルスは同時にあまりにも多くの複製を作るため、単独ではその速度に追いつけなかった。

そこで今回研究チームは、LASER ARTとCRISPR-cas9を組み合わせることを思いつき、その目論見が見事的中したというわけだ。

今回の実験では、健康なマウスに再移植した免疫細胞を調べたところ、HIVウイルスはまったく感染していないことも明らかになった。この新メソッドをもってすれば、HIVの完全根絶も夢ではなさそうだ。

研究チームは、すでにヒト以外の霊長類での試験を開始している。同様の効果が認められれば、いずれヒト試験への扉が開かれるだろう。HIV治療の未来は明るい。

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reference: time / written by まりえってぃ

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