世界初の「殺さない魚料理」が誕生! 細胞から切り身を培養

biology 2020/01/10

 

培養された切り身を使用した和え物 /  Credit:sandiegouniontribune
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  • 世界で初めて、ブリの細胞から完全な切り身を培養することに成功
  • 培養ブリを使用すれば、魚を殺すことなく魚料理を楽しめる

スーパーの魚コーナーには「天然物」「養殖物」の魚たちが並んでいます。近い将来、「培養物」の切り身が並ぶかもしれない衝撃的な出来事が起こりました。

「小さな細胞から食べ物を作り出す」ことを科学が可能にしてしまったのです。

米国サンディエゴのフードテック新興企業「BlueNalu」は、ブリから取り出した細胞を培養することによって、完全な切り身を作り出すことに成功しました。

詳細は地元誌「The San Diego Union-Tribune」に掲載されています。

細胞培養によってブリの切り身を作り出す

 

「BlueNalu」は起業して間もないフードテック会社ですが、世界で初めて、魚の細胞から完全な切り身を作り出すことに成功しました。これによって、ブリを殺さずに、切り身を食べることが可能になったのです。

細胞培養ブリは次の手順で実験室の中で作られました。

Credit:sandiegouniontribune

①ブリからサンプルとして筋細胞を摂取します。本物のブリが死ぬことはありません。

②サンプルから幹細胞(発生や組織の再生を担う細胞)を分離し、酵素で処理します。

③細胞はバイオリアクター(培養装置)に入れられ、栄養溶液の中で保存されます。溶液にはビタミン、塩、脂質、砂糖、植物性タンパク質、アミノ酸が含まれており、細胞が増殖するのに最適な環境となっています。

④細胞を遠心分離機に入れます。急速に回転させることにより、遠心力によって細胞を余分物質から分離させます。

⑥濃縮された細胞は、バイオインクと呼ばれる栄養価の高い液体と混ぜ合わせられます。その後、3Dプリンタ―を使って切り身の形状にプリントされます。細胞培養のブリの切り身の完成です。

「殺さない魚料理」の試食パーティー

Credit:sandiegouniontribune

培養ブリは食品として作られたので、美味しく食べることができなければ意味がありません。そのことを証明するためにも、「BlueNalu」は培養ブリを使った「殺さない魚料理」の試食パーティーを開きました。

シェフによって、培養ブリを使ったタコスやポケ(生の切り身と海藻や香味野菜、タレなどを合わせたハワイ料理)、シーフードビスクなどが提供されました。

培養されたブリの切り身は、直火で調理したり、蒸したり、油で揚げることが可能です。途中で身がバラバラになったりすることはありません。キムチなどの酸性化された溶液に付け込んだり、生のままでお刺身として提供したりできます。

Credit:sandiegouniontribune

世界初の「殺さない魚料理」の確立は世界に大きな影響を与えることでしょう。

世界中には、動物の搾取を避けるヴィーガニズムによって、倫理的に魚を食べない人がいます。また、魚の乱獲による環境変化が問題になることもあるでしょう。

「魚を殺さずに切り身を作り出す」技術は、倫理的かつ環境的な懸念に対処しつつ、本物の魚製品の需要を満たしていくことができるのです。

現在ではブリに加えてシイラ(マヒマヒ)やフエダイなど、他の魚種での培養も進められています。

もちろんまだまだ課題もあるようですが、スーパーに「培養物」の切り身が並ぶ日は近いかもしれませんね。

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reference: sandiegouniontribune / written by ナゾロジー編集部
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