15年前、探査機ホイヘンスが着陸時に「逆回転」した謎が解決

space 2020/01/19
Credit:esa
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  • ホイヘンス探査機はタイタンへと降下した際に原因不明の逆回転を起こした
  • 最近の研究により、ホイヘンス探索機の付属物やアンテナによって逆回転の力を生み出されていたことが判明した

2004年、小型探索機ホイヘンスは、土星探索機カッシーニから分離・放出され、2005年に土星の衛星タイタンに着陸しました。

タイタンは分厚く不透明な大気に包まれているため、それまで表面の観測は非常に困難でした。ホイヘンス探索機の着陸が成功したことによって、タイタンの地表を含む様々な情報を入手できたのです。

歴史的な成果を挙げたホイヘンス探索機でしたが、着陸前に研究者たちが予期しなかったトラブルが生じていました。ホイヘンスは反時計回りに回転しながら降下する予定でしたが、実際には時計回りに回転してしまったのです。

逆回転の原因は15年も謎のままでしたが、最近のテストにより、ホイヘンス探索機の付属物やアンテナが原因だったと判明しました。

この研究は2017年から2019年にかけてLPC2Eらによって実施されました。

ホイヘンス降下と逆回転

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ホイヘンスを単に分離・放出するだけでは、隕石のように猛スピードでタイタンに衝突してしまうでしょう。それを防ぐためにも、ホイヘンスには3段式のパラシュートが搭載されており、実際に時速300kmにまで減速して降下しました。

ホイヘンスは降下中にも映像や大気密度、温度などの情報を取得しなければいけません。減速や情報収集のためには機体を安定させる必要があります。科学者たちはホイヘンスに角度付きの羽根を付け、機体自体を回転させることで安定させようとしました。

点線:予測回転
実線:実際の回転
/Credit:esa

しかし、ホイヘンスは、最初こそ予想通りに動作していたものの、降下10分後には逆回転になってしまい、その後も逆回転を続けながら降下しました。

幸いなことに、逆回転は観測のタイミングにこそ影響を与えましたが、品質に大きな影響を与えるものではありませんでした。

ホイヘンスが逆回転した理由

当時の技術では逆回転は予測できませんでしたが、最近の研究によってその原因が明らかになりました。

亜音速風洞試験(人工的に音速に近い風の流れを作り出して、実際の状況を再現・観測すること)によって、ホイヘンスが実際に体験したであろう風力を1/3スケールのホイヘンスのレプリカに当てたのです。

映像では、白い煙によって、ホイヘンス周辺の空気の流れが視覚化されています。空気の流れがホイヘンス上部の突起によって大きな影響を受けていることが分かります。

逆回転の主な原因は、分離サブシステムと電波高度計アンテナなどの付属物と本来の回転を生み出すため羽根との相互作用だったようです。

まず、ホイヘンスの突起物が、降下中の空力により逆回転の力を生み出します。

この力が加わることにより、羽根は探索機周りの空気の流れを、予定とは別の流れに変えてしまいました。この空気の流れも逆回転の力を強めるよう作用してしまったようです。

結果として、ホイヘンスには全体的に強い逆回転の力が加わることになりました。

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「突起物があれば空気の流れが変わるのは当然」です。もちろん、当時の科学者たちも、「ホイヘンスの羽根がつくる空気の流れ」や「突起物がつくる空気の流れ」をそれぞれ単体では予測していたものと思われます。

しかし、それらがつくりだす「複雑な相互作用」までは把握しきれなかったのでしょう。当時の技術力を考えるなら、それも仕方のないことかもしれません。

ホイヘンスが逆回転してから15年の間に科学技術は驚くほど向上しました。高度なコンピューターシミュレーションによって複雑な空気の流れを予測できるようになっています。また、音速に近い風を作り出して実際の複雑な流れを再現することさえ可能になりました。

今回のホイヘンス逆回転の原因解明は、科学進歩の証明と言えるでしょう。

探索機の降下時の安定は非常に大切な要素です。複雑な相互作用の解明は、より安定した探査機の設計に役立ち、太陽系の調査を促進させるものとなるでしょう。

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reference: esa / written by ナゾロジー編集部

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