シュレーディンガーの猫の「フィルム化」に成功

fun 2020/03/01
映画化決定? /Credit:depositphotos
point
  • 重ね合わせの状態が徐々に崩壊していく様子を映画フィルムのように撮影できた
  • 重ね合わせが失われない測定の強さを知る方法が判明

生きている状態と死んでいる状態が重ね合わさったシュレーディンガーの猫は、量子力学的な奇妙な現象の代名詞とも言えます。

量子力学において物体の状態は観察するまで確定しないとされ、シュレーディンガーの猫もまた観察によって生死が決まるのです。

しかし今回スウェーデン、ドイツ、スペインの研究者が、重ね合わせの崩壊に僅かな時間の猶予があることを利用して、崩壊中の重ね合わせの状態の撮影に成功しました。

重ね合わせの世界にいるシュレーディンガーの猫は、どのように撮影されたのでしょうか?

研究内容はストックホルム大学のファビアン・ポコルニー氏らによってまとめられ、2月25日に学術雑誌「Physical Review Letters」に掲載されました。

Tracking the Dynamics of an Ideal Quantum Measurement
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.124.080401

観察と重ね合わせの崩壊

小さな量子の世界では、物体が確率的にしか存在できないとされています。

そのため、1つの物体が2つ以上の状態にある重ね合わせの状態が起きるのです。

しかし、この重ね合わせの状態は非常に繊細であり、観察によって容易に崩壊してしまいます

シュレーディンガーの猫で例えれば、生死が不明だった猫の「重ね合わせ状態」が崩壊して初めて、猫が生きているか死んでいるかが確定するのです。

対象となる状態の破壊をもたらしては、正常な観察とは言えません。

この観測と重ね合わせの崩壊は長年、物理学者の頭を悩ませてきました。

シュレーディンガーの猫はどうやって「撮影」されたか

立体のバーは重ね合わせの割合を示している。観測を繰り返すと重ね合わせの量が次第に低下するが、いつまでも重ね合わせが失われないものが5つ残った/Credit:PHYSICAL REVIEW LETTERS

近年になり研究者たちは、観測を行ってから重ね合わせの崩壊がはじまるまでに、僅かな時間的猶予があることに気づきました。

そこで猫の代わりに電界の中に閉じ込めたストロンチウムイオンの電子に対して、100万分の1秒という瞬時の観測を連続して実施。重ね合わせが崩壊するまでの短いロスタイムの間に、測定の影響下にある電子の動きを映画のフィルムのように連続して撮影し続けたのです。

結果、時間が進むにつれてストロンチウム内の電子の重ね合わせが徐々に失われていく様子の記録に成功しています。

シュレーディンガーの猫でいえば、猫の生きている状態と死んでいる状態の2つが同じ映画フィルムに収められたといったイメージでしょう。

またこの研究によって、重ね合わせには強度があり、瞬時の観測(弱い観測)では重ね合わせが失われないものがあることも分かっています。

これは、観察をやめると再び「猫の生と死が再び重ね合わさる」という状態に例えられるでしょう。

今回の結果を応用することで、様々な量子に対する理想的な観察強度を探し出し、重ね合わせの状態を維持したままの測定への一助となることが期待されます。

研究チームは今回の技術を利用して、ストロンチウムイオンを始めとしたイオンをビットに用いた量子演算機の研究もはじめているようです。

「量子のゆらぎ」によって真空中でも熱が伝わると判明

reference: sciencedaily / written by ナゾロジー編集部

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