生命の材料は鉱物を触媒にして作られた
矛盾を解くために、研究者たちは熱水噴出孔の周囲に積み上がった鉱物に目をつけました。
噴出孔を囲む鉱物は、地球の内部から吹き上がった金属を豊富に含んでいます。
研究者たちは、これらの鉱物がH2とCO2から有機物を作っている可能性があると考えました。
そして試行錯誤の結果、鉄と硫黄が結合したグライガイト(Fe3S4)、磁鉄鉱として知られるマグネタイト(Fe3O4)、ニッケルと鉄の合金であるアワルイト(Ni3Fe)の3種の鉱物が絞り込まれました。
研究者がこれらの鉱物とH2とCO2と水を反応させたところ、驚くべきことに、金属表面から「ギ酸」「酢酸」「ピルビン酸」「メタン」などの有機物が発生したのです。
現存するメタン菌などの細菌もH2とCO2からギ酸、ピルビン酸、酢酸、メタンを作成し、これらを材料にして自分の体となる核酸、アミノ酸、脂質を作っています。(メタンは排出される)
研究者たちは、熱水噴出孔でH2によるCO2還元反応が継続的に起これば、やがては核酸やタンパク質が作られ、生命に結びついたと考えています。
生命誕生以前、熱水噴出孔の「鉱物」は、生命材料の工場だったのです。
そのため、最初に存在したのは核酸でもタンパク質でもなく「鉱物」と言えるようです。
しかし「生命の材料は全て彗星が運んできた」とする説も根強く存在します。事実、最近の研究では彗星にアミノ酸だけでなくタンパク質が存在するとの報告もあげられました。
もしかしたら地球生命は、地球外と地球内のハイブリッド物質でできているのかもしれませんね。