新型コロナウイルスを「オンラインゲーム」で無毒化する計画が進行中

chemistry 2020/03/10
Folditのゲーム画面。タンパク質の構造を表している/Credit:Foldit
point
  • オンラインゲームのパズルを解くと抗ウイルス薬ができる
  • 過去にもゲーマーがパズルを解いて抗ウイルス薬につながる発見をした

世界の運命はゲーマーの手にかかっているのかもしれません。

ワシントン大学によって公開された無料オンラインゲーム『Foldit』は、パズル感覚でタンパク質の3次元構造を解くことを目的としています。

実はこの『Foldit』、過去に何度もゲーマーたちによってレジェンドが築かれてきたゲームなんです。

2011年には、研究者が10年以上かけても解けなかった「エイズウイルスを切断する酵素の構造」が、10日足らずでゲーマーによって解かれました。

また2016年に大学が開いた構造予測コンテストでは、スーパーコンピューターを擁する大学のチームが、ゲーマーチームに敗北しています。

ゲーマーの集中力と頭の回転は、人類に莫大な貢献をもたらす可能性を秘めているのです。

そこで研究者たちは、今世界を騒がせている新型コロナウイルスを無毒化するタンパク質の立体構造を、ゲーマーたちに設計してもらう計画を立てました。

プロジェクトはワシントン大学のタンパク質設計研究所によって主催されており、以下のページからゲームのダウンロードが可能です。

狙い目はウイルスのスパイク構造

左がコロナウイルスの構造を描いた二次元の模式図。右が三次元のイメージ。跳び出ている部分がスパイク構造。/Credit:大阪大学微生物研究所,depositphotos

新型コロナウイルスを無効化するためには、ウイルス表面にある「スパイク」と呼ばれる構造を狙うことが有効とされています。

スパイクはウイルスの球体の外側に突き出ている棘部分で、ウイルスが人間の細胞に接着し、細胞を騙して侵入するために使われるタンパク質です。

もしこのスパイクの接着機能を妨害したり、物理的に覆ってしまうようなタンパク質をゲーマーが設計できれば、ウイルスは人間の細胞に感染できなくなり、絶大な効果をもつ抗ウイルス薬となります。

ではなぜ、これを成し遂げるのがコンピューターではなくゲーマーなのでしょうか?

スーパーコンピューターではなくゲーマーが世界を救える理由

タンパク質は複雑な構造をしているが、すべて一本のアミノ酸の鎖を組み合わせてできている。所々にみえるらせん構造はアルファヘリックスと呼ばれる一本鎖のネジリ構造/Credit:千葉大学.キトサナーゼ酵素タンパク質

タンパク質はアミノ酸からなる1本の鎖が複雑に折れ曲がり、立体構造を作ることで形成されます。

タンパク質はあらゆる生命のあらゆる細胞の主役ともいうべき存在です。

筋肉細胞、脳細胞、血液細胞などが正しく機能するのも、タンパク質が正しく折り曲げられ、正確な立体構造をとっているためです。

現代の技術は、このタンパク質の一次元的なアミノ酸配列を調べることは得意なのですが、立体構造の予測となるとスーパーコンピューターを用いても困難です。

無限に選択肢がある場合、コンピューターは無限に演算し続け、結論が出ないからです。

一方で、人間の直観力は無限の選択肢の中から最適に近いものを瞬時に選ぶことが可能です。

実際に『Foldit』は直感的な操作が可能であり、人間の直観力をフルに生かすことができます。

タンパク質の構造は複雑にみえて、アミノ酸の大きさや正負の極性の引き合いなど、常に一定のルールの元に構成されています。

しかし一部のゲーマーは、ルールに従いながらも「ルールを超える」ことを得意としており、このゲーマーのトリッキーさが未知のタンパク質構造の構築に非常に有利に働くのです。

また、ゲームモードの中には、ゲーム開発画面に相当するような、抗ウイルスタンパク質をゼロから設計することができる高度なパズルも含まれているとのこと。

もしハイスコアを記録することができれば、次は実際に研究者たちによる実験で効果が試されることになります。

うまくいけば、世界で最も権威ある学術雑誌「nature」に共同研究者として、あるいは、人類をコロナウイルスから救った救世主として永遠に名前が残るかもしれません。

新型コロナの「ヒトの細胞にくっつく吸盤」のような構造が解明!ワクチン開発に貢献

reference: the-scientist / written by katsu
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