空気だけで生きる「驚異の細菌」が地球温暖化を食い止めるかも

geoscience

南極東部のウィンドミル諸島。空気を食べるバクテリアが最初に発見された場所。/Credit:Belinda Ferrari,UNSW

細菌(バクテリア)は、病気の原因だったり、不衛生な場所に発生する嫌な印象もありますが、生物が生きていくために欠かせない重要な存在でもあります。

私たちの消化を助けるのも、木が土中から得る窒素を供給するのも彼らです。細菌は地球の栄養素を循環させるために大きな役割を果たしているのです。

そんな細菌たちは、驚くほど極限状態でも生き抜く力を持っています。

南極の土壌から新たに発見された細菌は、この何も栄養源の無い場所で、空気だけで生存できることが確認されています。

そして新たな研究は、この霞を食べて生きる仙人のような特殊な細菌が、現在私たちがもっとも悩んでいる地球温暖化の解決に役立っている可能性を見つけたのです。

空気をエサにするバクテリア

調査のため南極の大地を歩いて移動する研究チーム。/Credit:Belinda Ferrari,UNSW

空気を吸うのではなく、食べ物にしているバクテリアは数年前に南極の土壌から発見されました。

このバクテリアは、極端な低栄養環境で検出されます。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の微生物学者Belinda Ferrari氏の研究チームは、この新しい微生物の炭素固定化プロセスに依存する生態系が存在するのではないかと期待しています。

このバクテリアは大気中の水素ガスを取り込んで酸化させ、大気中の二酸化炭素を炭素に変える能力をもっています。

この微生物が行う大気化学合成と呼ばれるプロセスは、光合成や地熱化学合成を組み合わせ、無機物から生き物に不可欠な有機物を作り出すことができます。

それは氷に閉ざされた過酷な環境の中でわずかに存在する生物たちに、燃料を供給する重要な役割を果たしていると考えられるのです。

そして、今回の新たな研究は、このバクテリアが南極以外でも、北極やチベット高原など厚い氷に閉ざされた土地に存在する可能性を発見したのです。

バクテリアは地球温暖化の救世主になるかもしれない

研究チームが、南極のミッチェル半島で土壌サンプルを収集している様子。/Credit:Catherine King,UNSW

研究チームは氷に覆われていない14の場所から、122の土壌サンプルを入手し分析を行いました。

彼らが調査目的は、大気化学合成にリンクする遺伝子を見つけ出すことです。

これらの場所は、定期的な凍結と融解のサイクルをもっており、紫外線が強く、水分、炭素、窒素が極端に低い環境です。

こうした場所では、光合成を行う微生物さえ存在していることは稀です。それにもかかわらず、研究チームはこれらのすべての場所で、目的の遺伝子を豊富に発見することができました。

このことから研究チームは、大気中の炭素を直接栄養源に変える彼らの食事法は、私たちが考えているより、ずっと広く地球上に普及している可能性があるといいます。

つまり、私たちがまだ知らない潜在的な炭素吸収源が、極寒の環境下に存在しているかもしれないのです。

また、この研究は、微生物の大気化学合成が地球規模の炭素収支に貢献していることを示しています。研究チームは、地球温暖化の影響により、栄養不足の極寒の地でこうした微生物が増加している可能性あると推測しているとのこと。

まだ研究は一部の土壌の調査のみに限られていて、この微生物が世界的に活動する存在かどうかを確認できているわけではありません。これを明らかにするためにはさらなる研究調査が必要です。

しかし、もしかしたらこの生き物たちは、行き過ぎた地球温暖化の勢いをいずれは緩やかに食い止めてくれる存在なのかもしれません。

 

この研究はオーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の微生物学者Belinda Ferrari氏の研究チームより発表され、論文はオープンアクセスの査読付き学術雑誌『Frontiers』に8月12日付けで掲載されています。

Soil Microbiomes With the Genetic Capacity for Atmospheric Chemosynthesis Are Widespread Across the Poles and Are Associated With Moisture, Carbon, and Nitrogen Limitation
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2020.01936/full

摩訶不思議な「金属で呼吸する細菌」、実は量子レベルの操作を行っていたと判明

「電子だけを食べて生きる電気生命体」の生育に成功

reference: UNSW,sciencealert/ written by KAIN
あわせて読みたい

SHARE

TAG