“音速の最高速度”が発見される! 空気中における音の伝わり方の約130倍ものスピード

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さまざまな音波。
さまざまな音波。/Credit:depositphotos

音の速度とはどのくらいでしょうか?

こう質問されれば、多くの人が迷わず時速約1000キロメートル(マッハ1)という数字を思い浮かべるかもしれませんが、これは大気中を伝わる音波の標準的な移動速度です。

実は液体や固体など伝わる媒体が変われば音速も変化していきます。

では、この宇宙でもっとも音を速く伝えるものはなんでしょうか? そしてその速度は一体どのくらいになるのでしょうか?

10月9日に科学誌『Science Advances.』で発表された新しい研究では、宇宙における音速の上限を特定したと報告しており、その速度は秒速36キロメートル(時速12万9600キロメートル)になるといいます。

これは一体どうやって導き出されたのでしょうか?

音速、光速の制限速度

反応!反射!音速高速!!
反応!反射!音速高速!!/Credit:松本大洋,小学館

アインシュタイン特殊相対性理論は、真空中の光に制限速度を与えました。

これは秒速約30万キロメートルで、光は真空中を電場と磁場の振動によって永続的に伝播していきます。しかし、光も水や大気のような媒体を通過するときは、その速度が低下します。

音は光とは異なり単純な振動エネルギーです。音は媒体となる物質の分子が衝突しあってそのエネルギーを伝達していきます。

粒子の運動で伝わっていく音波。
粒子の運動で伝わっていく音波。/Credit:The Science Cube

そのため、音は媒体が硬いほど伝わりやすくなり、その伝達速度も増加します

例えば、水は空気よりも粒子の密度が高いため音は速く遠くまで伝わります。過去に紹介したことがありますが、クジラが海中で遠方まで歌を響かせられるのはこのためです。

さらに固体中であれば、その伝達速度や伝わりやすさは空気中よりさらに高くなります。

そこで気になってくるのは、音速は最大でどのくらいの速度で媒体を伝わることが可能なのか? ということです。

何もなくても伝わる光速の上限速度は、すぐに特定されましたが、音の場合これは非常に難しい質問です。なぜならこれを決定するためには、宇宙にある全物質中の音の伝達速度を調べなければ、答えが出せないからです

そこで今回の研究チームが着目したのは、基本定数を利用した音速の計算でした。

定数を使った音速の計算

原子モデル。
原子モデル。/Credit:Depositphotos

研究で利用されたのは、荷電粒子間の電磁的な相互作用の強さを表す「微細構造定数」と、「陽子と電子の質量比」という2つの物理定数です。

こうした物理定数は、宇宙のどこへいっても変化することのない決められた値で、星の核融合や陽子の崩壊など宇宙を形成する現象を支配しています。

そして、研究チームはこの2つの定数を単純に組み合わせるだけで、固体や液体を伝わる波の移動速度を計算できることを発見したのです。

こうして作り出した方程式が実際に正しいかどうか、チームはさまざまな元素や固体液体中を伝わる音速の実験値と、計算された予想値を比べてみました。すると、それらの値はすべて見事に一致したのです。

宇宙でもっとも音を速く伝える物質

この研究成果からチームは、音の速度は原子の質量に応じて減少すると予測しました

すると宇宙でもっとも音を速く伝える物質は、固体の原子状水素(金属固体の水素)ということになります。このような状態の水素は100万気圧(地球大気圧の100万倍)以上の高圧の環境下でのみ存在できます。

そんな場所は、近場では木星のコアくらいしかありません。

そこで研究チームは予測を実験的に検証するため、250~1000ギガパスカルの固体原子状水素の性質に基づいた量子力学的計算を行って、固体原子水素を伝わる音速の限界を調査しました。

その結果は、やはり研究の予測と一致したのです。

こうして導き出された宇宙で最速で伝わる音の速度は、秒速36キロメートルとなったのです。これは非常硬いダイヤモンド中を音が伝わる速度の約2倍の速度です。

研究チームの計算式を適用した予測値が、実際の物質中を伝わる音速と一致しているならば、それは広く宇宙全体の媒体中を伝わる音の速度を予測する道具として使うことができます。

媒体中を伝わる音の性質は、現在物理学の研究ではとても重要な意味を持っています。

地球物理学の分野では地震波の伝わり方から地球の内部構造を探る研究を行っており、材料系の分野でも材料の特性を調べるために音波の伝達は重要なデータになります。

さまざまな媒体中の音速を予測するこの研究は、幅広く応用される興味深い知見を提供することになるでしょう。

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