染色体はX字型ではなく全く異なる形をしていた

超解像顕微鏡法を使用して作成されたクロマチンの多色画像
超解像顕微鏡法を使用して作成されたクロマチンの多色画像 / Credit:Xiaowei Zhuang lab

生物を勉強したことがある人なら、X字型の染色体の絵を見たことはないでしょうか?

『Cell』に掲載された論文によると、絵ではない分裂時以外の染色体の姿が撮影されたとのこと。

染色体の真の姿とは、いったいどんな形なのでしょうか。

>参照元はこちら(英文)

よく知られているX字型は染色体の一時的な形態に過ぎない

染色体は核内全体で複雑な展開をしている
染色体は核内全体で複雑な展開をしている / Credit:Cell

多くの教科書では、染体はソーセージが連なったX字型の構造として描かれています。

しかし馴染みのあるX字型の構造が現れるのは細胞分裂の間際だけであり、大部分の時間、染色体は別の姿で存在しています。

ですが、そんな通常時の染色体がどのような姿であるのかは、これまでわかっていませんでした。

DNAを書き換え、操作することはできても、人類はまだ何番の染色体が核の中のどこらへんで、どのような形状をとっているのか知らなかったのです。

ネックとなっていたのは、1本1本の染色体を識別する方法でした。

既存の検出方法では、染色体全体を染め上げることはできても、特定の染色体(例えば21番染色体のみ)を狙って識別することはできませんでした。

しかし今回、ハワードヒューズ医学研究所の研究者たちは、染色体の各所に、条件によって蛍光物質を生産する遺伝子を挿入し、染色体の形状をなぞるように3つずつ順番に発光させていったのです。

そして得られた無数の点を繋ぎ合わせることで、46本の全ての染色体の形状を浮かび上がらせることに成功します。

明らかになった染色体の動的な構造

通常の状態では、よく知られているX字型とは大きく異なる形状をしている
通常の状態では、よく知られているX字型とは大きく異なる形状をしている / Credit:Cell

新たな方法によって浮かびあかった染色体は、上の図のように、わたしたちが良く知るX字型とは程遠い、複雑な形状をしていました。

また核内の染色体は一見無秩序にぐちゃぐちゃになってみえますが、詳しい分析により、遺伝子の密度の多い領域が同じ地点に群がっている様子が確認されました。

この事実は、通常時の染色体は、遺伝子の活動が活発な部位が立体的に寄り集まって、効率的な転写を行うマイクロサイズのタンパク質工場を形成していることを示します。

またこの小さな工場は、時間や細胞の状況によって効率の良い別の形にシフトする「変形型工場」であると研究者たちは結論しました。

同じ形の染色体は存在しない

同じ種類の細胞でも染色体の構造は異なっている
同じ種類の細胞でも染色体の構造は異なっている / Credit:Cell

今回の研究により、染色体の真の姿の解明に一歩近づきました。

核の中で染色体は変形を繰り返し、より効率的な転写を行う無数のタンパク質工場を動的に作り出していたのです。

また今回の研究では、同じ種類の細胞であっても、対応する2つの染色体が同一の形状をとることがないことを発見しました。

この事実は、染色体の構造は秩序と無秩序(カオス)が複雑に絡み合いながら形成されていることを示唆します。

研究者たちは今後、様々な細胞の核内で、染色体の構造が時間や条件によってどのように変化していくかを確認していく予定です。

もしかしたら、染色体の構造を制御することで、塩基配列の書き換えに匹敵する変化を生物に与えられるかもしれません。

ただ人体の全ての細胞の染色体の活動を把握するのは、全塩基配列を決定するよりも遥かに難しくなるでしょう。

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