フェルマーの生家にある像の前で記念撮影するアンドリュー・ワイルズ。
フェルマーの生家にある像の前で記念撮影するアンドリュー・ワイルズ。 / Credit:en.wikipedia
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「フェルマーの最終定理」解決の裏に潜む数学ドラマ【後編】 (2/5)

2021.01.28 Thursday

2020.12.05 Saturday

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フェルマーの最終定理 解決の重要鍵2 「モジュラー形式」

モジュラー形式というのは4次元空間で極めて高い対称性を示すパターンに関する問題です。

数学の対称性は、私たちが一般的に使うのとは少し違う意味を持っています。数学のいう対称性とは、ある変換をしても変化が生じないことを意味します。

例えば監視カメラで、テーブルに置かれた食器を真上から監視しているとしましょう。

円は回転に対して高い対称性を示す。
円は回転に対して高い対称性を示す。 / Credit:canva

この中央の丸いお皿を、あなたが目を離した隙に誰かが回転させた場合、あなたはその事実に気づくことはできるでしょうか?

おそらく無理でしょう。なぜなら円は回転させても何も変化が起きないからです。けれどその横にあるフォークやナイフなら反対向きにされればすぐに気が付きます。

この場合数学では、円は回転という変換に対して極めて高い対称性を持つ、と表現されるのです。もしこれが正方形のお皿だったら、90度の回転に対しては対称性を持つことになります。

これが数学の対称性の意味です。そのため、回したりずらしたりしても形が変化しないような図形やパターンを作るというのが高い対称性の研究だと思えばいいでしょう。

さてそこでモジュラー形式ですが、モジュラーは上のお皿のようなX軸Y軸だけの二次平面ではなく、それぞれの軸が複素数(実数の軸と虚数の軸)になった4次元の軸上で議論されます。これを双極空間といいます。

双極空間は4次元なので人間の頭でイメージすることができません。しかし、天才画家のエッシャーはこの双極空間を二次元に埋め込んだ絵画をモジュラーの理論を利用して描いています。

「何言ってんのかわかんない」と思った人が多いでしょうが、モジュラーとは下の絵のような複雑な対称パターンを描く研究だと思ってもらえばいいでしょう。

エッシャーの絵画「サークルリミットⅣ」。
エッシャーの絵画「サークルリミットⅣ」。 / Credit:mcescher.com

このモジュラー形式にも、その構成要素を表すM系列という数列があります。

M1=1 , M2=2 , M3=3 , …

という具合に、高い対称性のパターンを生み出すためのモジュラーのDNAとなる数列があるのです。構成要素をどのような値にするかによってさまざまなモジュラーが生まれます。

この構成要素に適当に数値を選んだ場合、たちまち対称性は失われそれはモジュラーではなくなってしまいます。

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