重力波の観測を通してダークマターの存在を探知できる
重力波の観測を通してダークマターの存在を探知できる / Credit:Chris Henze / NASA
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「重力波」で未知の物理現象を探知する方法が開発される!

2021.01.27 Wednesday

2021.01.05 Tuesday

重力波が宇宙の謎を解くヒントになるかもしれません。

12月21日に『Physical Review D』に掲載された論文によれば、重力波を観測することで既存の科学では観測不可能な物理現象を探知する方法が示されました。

新たに開発されたこの方法は、史上初めて重力波の観測に成功した「LIGO(レーザー干渉計重力波観測所)」の改良にも用いられる予定であり、成功すれば、確実にダークマターを観測できるとのこと。

なにやら難しそうな話ですが、基本となる原理はだれでも理解可能。

具体的には、糸電話レベルの話となります。

その方法とは、いったいどんなものなのか見てみましょう!

>参照元はこちら(英文)

phys https://phys.org/news/2020-12-ripples-space-time-clues-components-universe.html

重力波とは何か?

重力波はブラックホールの衝突などの「大事件」のメッセンジャーである
重力波はブラックホールの衝突などの「大事件」のメッセンジャーである / Credit:KAGURA

重力波とは、時空の連続的な波のような歪みです。

アインシュタイン一般相対性理論によれば、質量を持つ物体全てが重力を持ち空間を大なり小なり歪ませているとされています。

しかし、どんなに重たい物質(例えばブラックホール)でも、ぽつんと存在しているだけでは歪みの傾斜は単調であり、波型にはなりません(下図)。

ですが、運動がはじまると状況は違ってきます。

重たい物体が加速度的な運動を行うことで重力波は発生する
重たい物体が加速度的な運動を行うことで重力波は発生する / Credit:KAGURA

ブラックホールや中性子星といった異常な重さを持つ物体が連になって互いを引っ張り合ったり、衝突したりすると、生じた空間の歪みが隣接する空間に伝播し、その空間もまた隣接する空間を歪ませていきます。

このような過程を経て、歪みは水面にできた波紋のように広がっていくのです。

こうして伝わってくる空間の歪みを、重力波と呼んでいます

つまり重力波は、宇宙で起きた大事件のメッセンジャーとも解釈できます。

2015年、人類は観測装置「LIGO」を用いて、はじめて重力波の観測に成功します。

以降、2年間で大きな変動は6回ほど記録され、そのうち5つはブラックホール同士の衝突であり、1回は中性子星どうしの衝突でした。
どうやら広い宇宙では、星やブラックホールの衝突は珍しくないようです(計算上は全宇宙で5分に1回以上起きている)。

また重力波には宇宙が続くかぎりどこまでもの速度で伝播していくという性質があるため、事件の場所がどんなに地球から離れていても、必ず到着します。

光と違って重力波は空間の全方位に向けて発信されているのです。

そのためもし宇宙全域にメッセージを伝えるなら、重力波を使った通信が最も確実と言えるでしょう。

今回の研究では、どのようにこのメッセンジャーを、未知の物理現象の探知に応用したのでしょうか?

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