宇宙の大規模構造と再構築法のイメージ。
宇宙の大規模構造と再構築法のイメージ。 / Credit:国立天文台
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スーパーコンピュータで4000の宇宙の時間を巻き戻す?! 宇宙の始まりを探る壮大な研究 (2/2)

2021.03.08 Monday

2021.03.07 Sunday

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宇宙を進化させてから再構築法で巻き戻す

そこで考え出されたのが、今回の研究です。

研究チームが考えたのは、実際にある初期条件で宇宙を成長させてから、再構築法で巻き戻したらどうなるか? というものでした。

例えば、ある密度ゆらぎの初期銀河分布を考え、そこから重力多体シミュレーションを行って大規模構造を形成させていきます。

ここで得られた銀河分布を、今度は再構築法によって巻き戻し、初期の銀河分布に戻すのです。

研究の解説図。初期密度ゆらぎが進化したと考えた銀河分布を用意し、そこから重力多体シミュレーションで現代の宇宙まで成長させる。それを再構築法で巻き戻し、最初の条件のものと見比べる。
研究の解説図。初期密度ゆらぎが進化したと考えた銀河分布を用意し、そこから重力多体シミュレーションで現代の宇宙まで成長させる。それを再構築法で巻き戻し、最初の条件のものと見比べる。 / Credit:白崎正人,国立天文台

もし再構築法が正しいならば、最初に与えた初期の銀河分布と、巻き戻して作られた銀河分布は非常によく似たものになるはずです。

研究チームは、このシミュレーションのために、天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ2」を使って、約1億体もの重力多体計算を実行しました。

天文学専門のスーパーコンピューター「アルテイⅡ」
天文学専門のスーパーコンピューター「アルテイⅡ」 / Credit,国立天文台

このシミュレーションでは、実に4000例ものさまざまな初期状態の宇宙を使って検証が繰り返されました。

すると、初期状態の銀河分布と、再構築法で得られた銀河分布が非常によく似た性質を持つことがわかったのです。

この結果から、銀河ザーベイの観測データに再構築法を適用することで、より単純なデータ処理で密度ゆらぎの検証ができる見通しが立ちました。

チームによると、これによりこれまで膨大な観測データを使っていたインフレーション理論の検証が、約10分の1の銀河観測だけで行えるようになるのだといいます。

これはつまり、必要な観測時間を従来の約10分の1まで圧縮できることを意味しています。

宇宙の始まりを科学的に検証する手段が手に入ったことで、ここから新たな宇宙の秘密が解き明かされていくかもしれません。

【編集注 2020.03.08 09:35】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。

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