有事に備えて地球生命のDNAを月に保存する計画がある。
有事に備えて地球生命のDNAを月に保存する計画がある。 / Credit: Roscosmos,NASA
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地球の生物670万種の精子・卵子サンプルを月で保存する「ノアの方舟」計画が考案される

2021.03.13 Saturday

Engineers Propose Solar-Powered Lunar Ark as ‘Modern Global Insurance Policy’(The University of Arizona) https://news.arizona.edu/story/engineers-propose-solar-powered-lunar-ark-modern-global-insurance-policy

現在地球の生物は6番目の大量絶命イベントに直面しているという考え方があります。

地球の気候に大きな変動が生じるのは、地球の歴史上珍しい出来事ではありません。しかし現代の絶滅期は、人類の活動が主な原因である可能性があります。

そのため、この状況を黙って見過ごすことは心苦しいと感じる科学者もいるようです。

2021年3月6日から13日に渡り開催中の『IEEE Aerospace Conference』で発表された新しい研究は、世界的な大災害の発生に備えて、地球上の670万種に及ぶ生物の精子・卵子のサンプルを月面下の溶岩洞を利用した施設に保存するという計画を提案しています。

まさに現代版ノアの方舟というべき壮大な計画ですが、これは実現されるのでしょうか?

地球の壊滅的なイベントから生物種を保護する

聖書の中で描かれるノアの方舟の物語。
聖書の中で描かれるノアの方舟の物語。 / Credit:canva

旧約聖書に描かれるノアの方舟のエピソードでは、神の啓示を受けたノアが巨大な方舟を建造して世界を滅ぼす大洪水を逃れます。

その際、ノアは神の指示に従い世界中の生物の雄と雌を一匹ずつ方舟に保護して、世界の再生のために備えています。

このノアの方舟の現代版と言うべき施設が、ノルウェーに存在します。それが「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」です。

スヴァールバル世界種子貯蔵庫。貯蔵庫搬入口(左)。貯蔵庫内部の様子(右)。
スヴァールバル世界種子貯蔵庫。貯蔵庫搬入口(左)。貯蔵庫内部の様子(右)。 / Credit:Wikipedia

この施設は予想される深刻な気候変動や大災害を懸念して、多様な植物の種子を冷凍保存している世界最大の施設です。

ここは農作物種などの保存がメインとなっていて、世界滅亡の危機がやってきた際には、ここに保存された種を使って栽培再開の機会を提供することを目的としています。

ちなみにこの施設の稼働を主導したのはマイクロソフト社のビル・ゲイツ氏です。

この施設は永久凍土層に建設されていて、人工的にマイナス20℃近くの温度が保たれていますが、冷却装置が故障した場合でもマイナス4℃は維持することができるとされています。

しかし、地球温暖化は現在想定以上の速度で進んでおり、2016年に永久凍土の溶けた水が施設内に浸透しました。

現代のノアの方舟は思いの外、地上の気候変動に対して脆弱性だったのです。

地球の大規模な気候変動や、大災害から種を保存しようとした場合、その貯蔵庫は地球上では安全に維持できないかもしれないのです。

そこで今回の研究を発表した、米国アリゾナ大学の航空宇宙及び機械工学の教授ジェカン・タンガ氏は、こうしたノアの方舟施設の拡張版となるものを面に建設しようと提案したのです。

地球の滅亡に対抗するため、生物種は月面に保存するべきだと主張されている。
地球の滅亡に対抗するため、生物種は月面に保存するべきだと主張されている。 / Credit: NASA

しかし、月面は生命にとって快適な環境とは言い難い印象があります。

果たして月面で地球の生物種を保存するということは可能なのでしょうか? それは一体どのような施設になるのでしょうか?

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