ダーウィンがその存在を予言したガが新種として記載される
ダーウィンがその存在を予言したガが新種として記載される / Credit: Minet et al. 2021(Natural History Museum) – Moth predicted to exist by Darwin and Wallace becomes a new species
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かつてダーウィンの予言した世界最長30cmの口器を持つスズメガが「新種」に認定

2021.10.04 Monday

New species has longest tongue of any insect https://www.science.org/content/article/new-species-has-longest-tongue-any-insect Moth predicted to exist by Darwin and Wallace becomes a new species https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2021/september/moth-predicted-to-exist-by-darwin-and-wallace-becomes-a-new-species.html

19世紀にダーウィンによってその存在が予言されていたマダガスカル産のスズメガの一種が、新種として記載されました。

本種は、あらゆる昆虫の中で最も長い口吻を持っており、最大個体では約30センチに達するとのこと。

マダガスカル固有のランが持つ極端に長い花蜜管の底に到達できる唯一の昆虫と考えられています。

研究は、ロンドン自然史博物館(Natural History Museum・英)、ISYEB(Institut de Systématique, Évolution, Biodiversité・仏)により行われました。

ダーウィンの予言が見事に的中!

本種の発見については、とてもユニークな歴史があります。

かの有名なイギリスの生物学者、チャールズ・ダーウィン(1809-1882)は、1862年1月に、マダガスカル固有の「アングレカム・セスキペダレ(Angraecum sesquipedale)」というランを入手した時、その非常に長い「距(きょ)」に驚きました

距とは、花びらの付け根にある筒状突起を指し、内部に蜜腺があります。

しかし、このランの距は平均20〜35センチもあり、普通の昆虫では口吻を挿し入れても蜜を吸うことができません

極端に細長いコップに対して、ストローが短いようなものです。

アングレカム・セスキペダレの距は、以下の動画でご覧いただけます。

一方で、このランも昆に蜜を吸ってもらわなければ、花粉を運んでもらうことができません

そこでダーウィンは、1862年に発表した自著の中で、「距の奥の蜜腺まで届くほど長い口吻を持つ送粉者の昆虫がいる」旨を予言したのです。

研究者たちの間でダーウィンの説は嘲笑され、そのような昆虫の存在はまったく信じられませんでした。

ところが、ダーウィンの死後の1903年に、彼の予言に当てはまる「蛾(ガ)」がマダガスカル島で発見されたのです。

このガは、ダーウィンの推測通り、非常に長い口吻を持っていました。

それ以後、本種は、アフリカ本土にいるスズメガ科の一種、Xanthopan morganiiに似ていることから、亜種のひとつと考えられ、新たに「キサントパンスズメガ(Xanthopan morganii praedicta)」と名付けられました。

ダーウィンの予言をもとに描かれたスズメガのイメージ図(1867年)
ダーウィンの予言をもとに描かれたスズメガのイメージ図(1867年) / Credit: en.wikipedia

これで一件落着…かと思いきや、今回、研究チームは、キサントパンスズメガが、アフリカ本土にいるスズメガの亜種ではなく、ひとつの独立した種であることを明らかにしました。

野生および博物館に保存されている標本をもとに、DNAバーコーディング(データベース上の既知種のDNAと照合することで、種を同定する技術)を行なった結果、マダガスカルのガと本土のガとでは、主要な遺伝子配列が7.8%も異なることが判明したのです。

また、形態学的な分析をしたところ、両者の間で、生殖器の形状、翅(はね)の形状、色柄など、25個もの違いが特定されたのです。

最も重要な点として、マダガスカル産の個体の方が、口吻が圧倒的に長く、平均して6.6センチもの差がありました。

本土のスズメガ(右)とマダガスカル固有のスズメガ(左)
本土のスズメガ(右)とマダガスカル固有のスズメガ(左) / Credit: Minet et al. 2021(Natural History Museum) – Moth predicted to exist by Darwin and Wallace becomes a new species

マダガスカル産の最大個体では、口吻を完全に伸ばすと28.5センチという驚異的な長さに達しています。

これは間違いなく、世界最長の口吻を持つ昆虫であり、アングレカム・セスキペダレとの共進化を示唆します。

結果的に、研究チームは、マダガスカル固有のスズメガを新種として記載し、新たに「Xanthopan praedicta」と命名しました。

種小名のpraedictaは、ダーウィンがその存在を予言(predict)したことに敬意を表しています。

ダーウィンも、自ら予言した昆虫が種として記載されて、草葉の陰で喜んでいることでしょう。

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