超高速水透過と脱塩を両立するフッ素化ナノチューブ
超高速水透過と脱塩を両立するフッ素化ナノチューブ / Credit:伊藤 喜光(東京大学)ら_水を超高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素ナノチューブを開発 —次世代超高効率水処理膜の実現に向けて—(2022)
chemistry
水を超高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素ナノチューブを開発 —次世代超高効率水処理膜の実現に向けて— https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2022-05-13-001
Ultrafast water permeation through nanochannels with a densely fluorous interior surface https://www.science.org/doi/10.1126/science.abd0966

2022.05.17 Tuesday

水を高速で通すのに”塩は通さない”「フッ素化ナノチューブ」を開発!

地球規模の飲料水不足を解決するには、海水の淡水化をもっと容易にしなければいけません。

しかし現時点で利用できる水処理膜(海水から塩分を除去するフィルター)には限界があります。

そこで東京大学・大学院工学系研究科に所属する伊藤 喜光(いとう よしみつ)氏ら研究チームは、水を超高速で通しつつ塩は通さない「フッ素化ナノチューブ」を開発しました。

これを利用して新しい水処理膜をつくるなら、海水を高速で真水に変えることも可能かもしれません。

研究の詳細は、2022年5月12日付けの科学誌『Science』に掲載されました。

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水処理膜の目標は「アクアポリン」だった

アクアポリンによる水の取り込みの概念図
アクアポリンによる水の取り込みの概念図 / Credit:Opossum58(Wikipedia)_アクアポリン

処理膜の基礎研究において、これまで注目されてきたのは「アクアポリン」でした。

私たち生物の体は細胞が集まってできています。

そしてこれら細胞は、細胞膜に存在する膜タンパク質「アクアポリン」によって水を取り入れています。

アクアポリンには水分子1つがやっと通れるような0.3nm(ナノメートル)の穴が開いており、他のイオンや物質を通さず、水だけを浸透させます。

「アクアポリン」は「水の穴」という意味ですが、まさに名前通りの性質をもっているのですね。

研究者たちはアクアポリンを目標にして淡水化フィルターを開発してきた
研究者たちはアクアポリンを目標にして淡水化フィルターを開発してきた / Credit:Depositphotos

以前から研究者たちは、アクアポリンの高い水透過能と塩除去能に注目しており、これを海水の淡水化に利用できないかと考えてきました。

アクアポリンを模倣した材料を開発することで、高速の淡水化が可能になると考えたのです。

数々の研究が行われてきましたが、現段階では、アクアポリンの性能を大きく超える材料の開発には至っていません。

そこで伊藤氏ら研究チームは、アクアポリンから離れて、別のアプローチを取ることにしました。

次ページアクアポリンの4500倍の速度で水を通す「フッ素化ナノチューブ」

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