がん細胞を殺すウイルスが人間に注射される臨床試験が開始
がん細胞を殺すウイルスが人間に注射される臨床試験が開始 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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サル痘ウイルス近縁種などを改造して「がん細胞キラー」を開発! すでに人間で試験開始!

2022.05.24 Tuesday

First Patient Injected With Experimental Cancer-Killing Virus in New Clinical Trial https://www.sciencealert.com/first-patient-injected-with-experimental-cancer-killing-virus-in-new-clinical-trial
A Study of CF33-hNIS (VAXINIA), an Oncolytic Virus, as Monotherapy or in Combination With Pembrolizumab in Adults With Metastatic or Advanced Solid Tumors (MAST) https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05346484 Recombinant Orthopoxvirus Primes Colon Cancer for Checkpoint Inhibitor and Cross-Primes T Cells for Antitumor and Antiviral Immunity https://aacrjournals.org/mct/article/20/1/173/92921/Recombinant-Orthopoxvirus-Primes-Colon-Cancer-for

ウイルスでがんが治るかもしれません。

オーストラリアを本拠地とするバイオ企業「Imugene Limited社」は、がん細胞を殺すように改造されたウイルスを人間に注射する、臨床試験が開始されたと発表しました

新たな試みでは、人間の害になるウイルスを、がん細胞だけに影響するよう再設計し、がん治療に利用する戦略が用いられています。

驚くべきは、これが現在世間を騒がせるサル痘などを引き起こす種類のオルソポックスウイルスを元にしていることです。

もし臨床試験が成功すれば、治療が困難ながんで苦しむ多くの人々の命を救うことになるでしょう。

臨床試験の計画書は2022年4月26日に『ClinicalTrials.gov』にて公開されました。

がん細胞だけを殺す改造ウイルスが開発された

がん細胞だけを殺すウイルスが開発された
がん細胞だけを殺すウイルスが開発された / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

地球上には人間に感染する数多くのウイルスが存在します。

ウイルスが感染した細胞は生命活動を乗っ取られてウイルス生産工場になることを強いられ、最終的に破裂して何千もの新たなウイルスを放出します。

そして放出されたウイルスは体内の別の細胞に感染するだけでなく環境にも放出され、感染拡大を引き起こします。

私たち生命体にとって細胞を破壊するウイルスの存在は、ごく一部の例外を除いて、害悪そのものと言えるでしょう。

しかし強力な敵は使い方によっては強力な味方にもなり得ます。

例えば過去に行われた研究ではエイズウイルスを改良し、人間の赤ちゃんの命を救うことに成功しています。

生まれた赤ちゃんの遺伝子を「ウイルスで書き換え」命を救うことに成功

そこでImugene Limited社の研究者たちは、哺乳類に対して天然痘のような症状を引き起こす「オルソポックスウイルス」の遺伝子を組み変えて、がん細胞だけに感染する「CF33‐hNIS(VAXINIA)」を開発しました。

天然痘と言われると、現在世間を騒がせているニュースが思い浮かぶ人も多いかもしれませんが、噂の「サル痘」もオルソボックスウイルス属に分類されます。

そのため、このウイルスはサル痘などを引き起こすオルソポックスウイルスを元に人工的に作られたキメラウイルスということになるでしょう。

この研究は現在マウス実験で有望な結果が示されています。

がんになったマウスを用いた実験では、CF33‐hNISの投与によってがん細胞が殺害されている様子が確認されたのです。

しかしより重要なのは、殺されたがん細胞がまき散らす断片です。

破裂して死んだがん細胞が増えてくると、人間の免疫システムはがん細胞の断片を「異物」として認識するようになり、それら異物の元となる「がん細胞そのもの」に対する攻撃もはじまっていました。

さらにがん細胞の断片の情報が免疫細胞に記憶され、がんが再発した場合にも速やかに免疫システムによる排除が行える可能性が示されました。

加えて、免疫療法と併用で免疫の攻撃力を増加させるこで、抗腫瘍効果がより高まることが判明します。

この結果は、CF33‐hNISは単にがん細胞を殺すだけでなく、がん細胞の「死体」を使って免疫システムを訓練するリアルタイムのワクチン生成能力があることを示します。

(※CF33‐hNISは腫瘍を溶かすようにして小さくするため「腫瘍溶解性ウイルス」とも呼ばれています)

問題は、同様の効果が人間にも当てはまるかです。

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