浮遊スクリーンに投影されたウサギ
浮遊スクリーンに投影されたウサギ / Credit:Ryuji Hirayama(UCL)et al., Science Advances(2022)
physics

障害物があっても自在に物質を摘んで動かし、3D映像の投影もできる「音響ピンセット」

2022.06.20 Monday

3D rabbit ‘hologram’ created by levitating screen using sound waves https://www.newscientist.com/article/2324931-3d-rabbit-hologram-created-by-levitating-screen-using-sound-waves/
High-speed acoustic holography with arbitrary scattering objects https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn7614

まるで念力のように、物体を浮遊させることは可能です。

現代では、音波を利用した浮遊技術が存在するのです。

そして新しく、イギリスのユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)コンピュータ科学部に所属する平山 竜士(ひらやま りゅうじ)氏ら研究チームは、障害物があっても物体を自由自在に動かす技術を開発しました。

また、この技術とプロジェクターを組み合わせることで、空中を飛ぶカラフルなチョウや、浮遊スクリーンに映し出されたウサギなどをつくりだすことにも成功しています。

研究の詳細は、2022年6月17日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

障害物があっても機能する音波浮遊技術

音波をつかった物体浮遊技術は、以前から研究されてきました。

これは波の干渉を利用して物体を浮かせる技術です。

そのためには、大量に並べた超音波発振器をリアルタイムで制御して、適切な音場を生成しなければいけません。

音波浮遊装置の例。大量に並べられた超音波発振器
音波浮遊装置の例。大量に並べられた超音波発振器 / Credit:Shota Kondo et al.,Japanese Journal of Applied Physics(2021)

そして私たちの身の回りの空間では、それが難しい場合がほとんどです。

障害物が何もない空間であれば、音場の制御は比較的容易ですが、音波を反射する障害物が近くにあると、途端に物体を浮遊させることが難しくなるのです。

しかし最近では、世界中の科学者たちによって、徐々にこの課題が克服されつつあります。

例えば、東京都立大の研究チームは、2021年に発表した論文で、音波を反射しやすい台の上で物体を浮遊させたと報告しました。

音波で物を持ち上げる「音響ピンセット」に新技術、反射しやすい台でも浮く

そして今回、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の平山氏ら研究チームは、もっと複雑な反射や散乱に対応できる音波浮遊技術を開発したと報告しています。

彼らは、小型の超音波発振器256個をデバイスの上下に配置。

これにより、デバイス内の空間では音場がリアルタイムで調整され、浮遊物体を絶えず動かせるようになりました。

音波を散乱させる障害物があっても浮遊させられる
音波を散乱させる障害物があっても浮遊させられる / Credit:Ryuji Hirayama(UCL)et al., Science Advances(2022)

しかも、壁や観葉植物のような「音波を散乱させる障害物」が複数あっても、コンピュータアルゴリズムが即座に計算し、音波の形状を調整。浮遊状態を維持できるというのです。

このアルゴリズムの性能は非常に高く、揺れ動く水面上でも物体を浮遊・移動させることができるのだとか。

音波でインクを浮かして移動させる。揺れ動く水面上でも可能
音波でインクを浮かして移動させる。揺れ動く水面上でも可能 / Credit:Ryuji Hirayama(UCL)et al., Science Advances(2022)

また浮遊する物体を指や棒で自由に操作することも可能なようです。

指で浮遊物体を誘導できる
指で浮遊物体を誘導できる / Credit:Ryuji Hirayama(UCL)et al., Science Advances(2022)

さらにチームは、この技術とプロジェクターを組み合わせることで、新たな映像表現をつくりだしています。

次ページ空中を「舞うチョウ」と「飛び跳ねるウサギ」

<

1

2

>

物理学のニュースphysics news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!