全色盲の人々が「遺伝子治療」で初めて赤色を視た!
全色盲の人々が「遺伝子治療」で初めて赤色を視た! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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「灰色の世界」にいる全色盲の人々が遺伝子治療で初めて赤色を視ることに成功! (2/2)

2023.07.19 Wednesday

前ページ色が識別できないとは医学的にどういう状態なのか?

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初めての「赤」は輝き背景と別の面にあるようにみえた

初めての「赤」は輝き背景と別の面にあるようにみえた ※イメージ図
初めての「赤」は輝き背景と別の面にあるようにみえた ※イメージ図 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

遺伝子治療を受ける以前、被験者たちはが認識できず、灰色の背景の上に赤い線を引いた図をみても、赤い線に気付くことができませんでした。

しかし遺伝子治療から徐々に時間が経過し数か月が経過すると、同じ図に背景とは違うものが映り込んでいることに気付いたのです。

そこで研究者たちは被験者たちに対して、新たに現れた線がどのように知覚されるかを説明するように求めました。

しかし被験者たちは、新たな見えるようになった赤い線を説明するための適切な言葉がみつかりませんでした。

うまれてからずっと灰色の世界で暮らしてきた被験者たちにとって、突然みえるようになった赤色は説明困難な存在だったようです。

ただそれでも研究者たちは被験者に対して、できる限り正確な表現で説明してくれるように求めました。

すると被験者たちは新たな赤い線を「背景とは異なる輝きをみせたり、背景とは異なる面に浮かび上がったり沈み込んだりした状態でみえた」と証言しました。

この結果は、遺伝子治療によって錐体細胞の赤色を感じる能力が被験者たちに付け加えられたことを示しています。

さらに遺伝子治療の1年後に再び患者全員の検査を行ったところ、治療効果は維持されていることが明らかになりました。

あらゆる色覚を体験している普通の人にとっては大したことには思えないかもしれませんが、灰色の世界に住んでいた被験者たちにとっては大きな前進です。

そのため被験者たちは今回の研究結果を、遺伝子治療による色覚獲得への重要な第一歩であると評価しています。

しかし正常なCNGA3が働いているにもかかわらず、なぜ赤色だけが検知されたのでしょうか?

遺伝子治療で人間の色覚を回復させたのは確かに大きな成功ですが、理論上は赤色だけでなく全ての色がみえるようになっているハズです。

この点について研究者たちは、普通の人間ならば明るい場所では物体の形を認識する桿体細胞が不活性になるものの、被験者たちの網膜では活性化したままであることに気付きました。

この性質のお陰で被験者たちは錐体細胞が機能していなくても、常に物体の形を認識できました。

しかし明るい場所でも桿体細胞が活性化してしまったせいで、正常なCNGA3を経て錐体細胞の機能が復活しても、色にかんする信号が乱されてしまい、赤色しか認識できなくなっていたのです。

色認識機能が停止しているときに得られた恩恵が、色認識機能が復活すると恩恵ではなく害になるというのは、悲しい結果です。

ただ遺伝子治療による色覚の復活ははじまったばかりの試みであり、今後は手法の改善が続くと予想されます。

研究者たちは今後数年にわたって被験者たちの状態を監視し、後日、もう片方の目に遺伝子治療を試みる予定です。

現在、遺伝子治療の試みはさまざまな先天性疾患について試みられており、過去には致死的な遺伝病を持つ赤ちゃんたちを治療することにも成功しています。

近い将来、外部から好ましい遺伝子を注入する手法は、病気治療を超えて利用が進むと考えられます。

それは知性や運動能力を含め欲しい能力を後天的に獲得するという形で、私たちの生活に浸透していくかもしれません。

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