NASAが開発した「パンクしないタイヤ」
NASAが開発した「パンクしないタイヤ」 / Credit:NASA,STC_The SMART Tire Company
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自転車の寿命まで交換必要なし!NASAの技術を応用した「パンクしないタイヤ」

2024.02.02 Friday

火星や月を走る探査機をメンテナンスすることは、地球ほど容易ではありません。

凸凹の地面を走らなければいけないにも関わらず、パンクしても修理することは難しいのです。

そのためNASAは、50年以上にわたり、探査機用タイヤの開発に目を向けてきました。

現在では「パンクしないタイヤ」の開発に成功しており、その技術は一部の企業にも提供され、市場に投入されるまでになりました。

アメリカ・カリフォルニア州の企業「SMART Tire Company(STC)」は、NASAの研究所「グレン研究センター」の発明者たちと協力することで、NASA技術を使用したエアレスタイヤ「METLタイヤ」を開発することに成功しています。

NASA invented wheels that never get punctured — and you can now buy them https://www.zmescience.com/science/news-science/nasa-wheel-no-punctures/ Since 1967, NASA has been developing groundbreaking tire technologies for driving on the Moon, Mars, and now… https://www.smarttirecompany.com/ Reinventing the Wheel https://www3.nasa.gov/specials/wheels/ Space-Age Bicycle Wheels Using NASA Technology https://www.kickstarter.com/projects/smarttirecompany/space-age-bicycle-wheels-using-nasa-technology/description

NASAが追い求める「探査機用の車輪技術」

二輪の手押し車「Modular Equipment Transporter(MET)」とそのタイヤ
二輪の手押し車「Modular Equipment Transporter(MET)」とそのタイヤ / Credit:NASA_Reinventing the Wheel

長年、NASAの研究者たちは、月や火星を走る探査機のための車輪を探し求めてきました。

例えば、アポロ14号のミッションで用いられた二輪の手押し車「Modular Equipment Transporter(MET)」には、窒素を充填したゴムタイヤが採用されました。

またアポロ15号~17号のミッションで使用された月面車「Lunar Roving Vehicle(LRV)」では、4つのワイヤーメッシュホイールが採用されていました。

月面車「Lunar Roving Vehicle(LRV)」
月面車「Lunar Roving Vehicle(LRV)」 / Credit:NASA_Reinventing the Wheel

しかし、将来に続く壮大なミッションを実現させるためには、より高性能な車輪の開発が必要です。

そこで2000年代半ば、NASAの研究所「グレン研究センター」のエンジニアたちは、新たな車輪を開発しました。

それは、スチールワイヤーをメッシュ状に織り込んだ「スプリング・タイヤ(Spring Tire)」です。

スプリング・タイヤ
スプリング・タイヤ / Credit:NASA_Reinventing the Wheel

従来のタイヤとは違い空気を含まず、砂地や岩場でも優れた牽引力と耐久性を発揮します。

しかし、このスプリング・タイヤも、実際に火星の地形を再現した実験場を走らせると、その過酷な地形によってスチールワイヤーが変形してしまうという問題を抱えていました。

そこでNASAの研究者たちは、スプリング・タイヤの材料に形状記憶合金である「ニッケルチタン(NiTi)を用いることで、その性能を劇的に進化させました。

形状記憶合金「ニッケルチタン(NiTi)」を用いたスプリング・タイヤ
形状記憶合金「ニッケルチタン(NiTi)」を用いたスプリング・タイヤ / Credit:NASA,STC_The SMART Tire Company

NiTiを用いたスプリング・タイヤは、従来の空気入りタイヤと比べて、同等以上の牽引力を発揮しますが、変形したりパンクしたりしません。

一般に使用されているゴムタイヤは0.3~0.5%のひずみに耐えることができますが、改良されたスプリング・タイヤは最大10%のひずみに耐え、しかも変形後は、すぐに元の形状に戻るのです。

改良されたスプリング・タイヤは試験場でもテストされており、「決してパンクしない」と言えるほど印象的なパフォーマンスを見せました。

今後、このタイヤ技術が導入された探査機が、火星や月で活躍することでしょう。

一方で、こうした「NASAの技術を地球で利用する」取り組みも進んでいます。

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