人間の進化に「恐怖症」はメリットがあるのか?

biology 2018/07/16

人の数だけ「恐怖症」がある?

「高所恐怖症」や「クモ恐怖症」に代表されるような「恐怖症」は、非常に不思議な感情です。実際には害がないように思えるシチュエーションにおいても、特定の対象物に対する強い「恐怖」を感じてしまいます。自分で「過剰反応」だと分かっていたとしても、その感情に打ち勝つことはできません。

最近広がりをみせているものとしては「社交不安障害」があります。これは「社会」に対する恐怖症であり、人と関わる社交的な状況を避けてしまうものです。

このように恐怖症は千差万別、様々な種類のものが存在していますが、どうしてこんな症状が表れてしまうのでしょうか?どうして「クモ」にただならぬ恐怖を感じる人がいる一方で、「血」を見るだけで失神してしまいそうになる人がいるのでしょうか?

 

「恐れ」と「恐怖症」

まずは「恐れ」と「恐怖症」の区別をはっきりとさせておきましょう。入れ替えても問題がなさそうな2つの単語ですが、そこには明確な違いがあります。

「恐れ」は、私たちの「学習」プロセスに役立つものです。つまり、潜在的な「脅威」が私たちの身に迫っている場合に「恐れ」によってそれを感知し、警戒心を強めることができるといった働きがあります。そしてその経験を学習することで、特定のシチュエーションにおける危険を、それ以降に回避することができるのです。

一方、「恐怖症」は「学習」とは何の関係もありません。「恐怖症」においては、実際に「脅威」が迫っているわけではなく、それは特定のシチュエーションにおける「極端な反応」に過ぎません。

 

「恐怖症」の進化におけるメリット

Credit: Bryce McQuillan / Wikimedia Commons

多くの一般的な恐怖症は、私たちの祖先の「潜在的な危険」に関係しています。たとえば「高所恐怖症」は、祖先たちを崖から遠ざけるために発達したものであると考えられるし、「クモ恐怖症」は、自然界に存在する多くの毒グモを避けるために発達したと考えられます。

しかしながら、現代ではそのような「潜在的な危険」の多くは消え去ってしまいました。すなわち多くの恐怖症は、「潜在的な危険」がまだ身近であった頃の名残りであるといえます。そして、無くなってしまった危険に過剰に反応してしまうのは、まさしく「アレルギー」のようなものです。

このように謎多き「恐怖症」において、私たちの祖先が進化の過程で「恐怖症」を活用してきたといった説は、今のところ最も有力とされています。しかしながらその理論も完璧ではありません。たとえば、なんとも皮肉な「Hippopotomonstrosesquipedaliophobia(長い単語恐怖症)」は、私たちの進化の過程とは全く関係のないものです。

また、恐怖症は「克服できる」ものでもあります。高所恐怖症を克服してパイロットになった人もいるくらいです。日常生活の妨げになるほどに、何かの「恐怖症」に悩んでいる人は、専門家の指導のもとでその悩みを解決することができるかもしれません。

 

via: scienceabc / translated & text by なかしー

 

関連記事

人が感じる嫌悪感は「病気を避けるための行動」からきている

人間の「眉毛」はなんで動くの?「眉毛コミュニケーション」が進化の上で重要だったと判明

催眠術で「偽の記憶」を植え付け「不安を解消する」という研究

SHARE

TAG

biologyの関連記事

RELATED ARTICLE