精神病リスクを持つ人の「会話の特徴」とは?

artificial-intelligence 2019/08/04
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Point

■会話分析を行うAIを用いて、統合失調症などの精神病を判断する研究が行われた

■このAIでは、ニューヨーク・タイムズやネット掲示板の膨大な文章から会話の内容を解析する機械学習を行っている

■最終的にAIは、会話の意味密度、頻出する単語傾向などから90%近い精度で患者を判断することに成功した

精神病の判定は、センシティブな問題で、専門の医師でも判断するのが難しいものです。

特に、症状の早期発見となると、それはかなり難しい問題になります。

確かに、精神の病をどう定義し、定量評価を行うかは今もあいまいで、精神科は高度に機械化されていく医療診断の分野で、未だ取り残された領域と言えるでしょう。

この問題について、最近はAIを用いて判断する研究に関心が集まっています。

それはAIなら、精神症状に見られる明らかな共通点を、客観的に判断することが可能と期待されるためです。

そこで、何に着目して分析を行うかという点が、この研究の肝となります。これまでにも、マイクロソフトなどが被験者の表情や音声から精神症状を診断する研究を行っています。

今回報告された研究では、この精神症状の分析において、被験者の会話内容に着目しており、AIは90%近い精度での患者の判定に成功しています

この研究は、ハーバード大学とエモリー大学の研究者から発表されていて、6月13日付でネイチャー・パートナー・ジャーナル Schizophreniaに公開されています。

A machine learning approach to predicting psychosis using semantic density and latent content analysis
https://www.nature.com/articles/s41537-019-0077-9

統合失調症の会話傾向

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統合失調症や双極性障害(旧名:躁うつ病)の患者には、共通した会話の傾向があります。

その1つが、会話の意味密度が低いというものです。意味密度とは、使用している単語の数に対してあまり意味のないことを言っているということです。

多くの言葉を使いながら、ほとんど意味を伝えない人というのは、統合失調症や双極性障害を発症するリスクがかなり高いと考えられます。

会話から精神病リスクを発見するAI

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エモリー大学の精神科医が行った研究では、こうした会話の意味密度に着目しています。

AIに被験者40人の会話サンプルを聞かせ、意味密度の低い人の抽出を行った結果、後続の調査で抽出された対象の80%が実際に精神病を発症したのです。

またこのAIは、ニューヨーク・タイムズなど新聞の文章や、Redditという海外の電子掲示板(5ちゃんのようなもの)の3万人の投稿者の間で交わされた会話を利用して、単語の意味が近いもの同士をクラスタ分けする機械学習も行っています。

この学習によって、AIは潜在意味解析という、会話を行っている人物が潜在的に興味を向けている話題を抽出することも可能です。

この解析の結果、これまでに見つかっていなかった新たな精神病リスクのある会話傾向が発見されました。

それは精神病を発症した人たちは、「声」「音」「聞こえる」「ささやき」といった種類の、主に聴覚に関係する話題に強い関心を寄せる傾向があるというものです。

こうした聴覚に関係する概念クラスタは、興味深いことに学習時に利用された会話サンプルの中には生じていませんでした。

この潜在意味解析の結果も踏まえ、意味密度の低さ、聴覚に関連する単語の利用頻度を含めてAIに会話を分析させた結果、精神病の検出率は90%以上になったのです。

おそらくこの結果は、幻聴のようなものに言及することが多いことが一因と考えられます。またちょっとした雑音に反応しやすいという傾向にもつながる可能性があります。

これまで明らかではなかった事実が、AIの分析によって発見されるというのは面白い結果です。

最近は大きな犯罪を犯す人物が、事前にネットへ書き込みしていたという事実も多く聞かれます。今回は学習段階で、掲示板の書き込みが利用されたということですが、もしかしたら、そのうち、掲示板の書き込みからAIが危険人物を判定して通報するという時代が来るのかもしれません。

過度の自己批判が「心の脆弱性」をつくりだす

reference:psychologytoday,厚生労働省,jst/ written by KAIN

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