孤独にも種類がある。「実存的孤立」を感じる人は死を連想しやすい?

psychology 2019/09/04
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Point

■実存的孤立を強く感じる人ほど、死を連想する傾向が強いことが判明

■実存的孤立とは、「自分の経験は自分だけのもので、他の人には決して理解できない」という内的な経験のこと

■実存的孤立は、不安を和らげる緩衝材として働く自尊心や信仰などの「不安バッファー」を弱体化する

「実存的孤立」という言葉を聞いたことがありますか?

それは単なる寂しさや社会的孤立とは違って、もっと内的なものです。「自分の経験は自分だけのもので、他の人には決して理解できない」といった主観的な感覚とも言うことができます。

この実存的孤立を強く感じる人ほど、死を連想する傾向が強いことが最近の研究で明らかになりました。米ミズーリ大学のピーター・ヘルム氏らによる本論文は、「Journal of Research in Personality」に掲載されています。

Existential isolation and death thought accessibility
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092656618302319

2つの調査から見えてきた相関

ヘルム氏らは、心理学を専攻する大学生1,545名を対象に2つの調査を行いました。

1つ目の調査は、被験者に「大抵の場合、他の人は私の経験を理解しない」などの文に、どの程度同意するかを尋ねるというものでした。これにより、各被験者が感じている実存的孤立が計測しました。

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また、2つ目の調査では、単語穴埋めクイズによって死の連想への近接性が測られました。このクイズは、ある単語に欠けている文字を回答するというもので、完成する単語は死に関連するものか、そうでない中立的なものかのどちらかでした。たとえば、co__seの場合、course(方向)とcorpse(死体)のどちらかを作ることができます。

回答を分析した結果、実存的孤立を感じることが、死を連想する傾向と繋がっていることが明らかになったのです。

実存的孤立が不安バッファーを弱体化

自尊心や信仰といった「不安バッファー」には、「避けられない死への不安」や「人生の無意味さ」などの実存的不安を和らげる緩衝材としての機能があります。

不安バッファーは究極的には、社会的検証を通じて構築・維持されます。つまり、不安バッファーの強度と有効性は、周囲にいる他者が「自分の世界観は意味があり、正当だ」ということにどの程度同意するかに、一部依存しているということです。

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ヘルム氏はこのことから、「実存的孤立が不安バッファーの働きを弱める」という結論を導き出しています。言い換えると、自分の経験の妥当性が社会に認められないという経験が、不安バッファーを弱体化する作用を持つということです。

また、この論文で報告しているすべての調査を通じて、実存的孤立と孤独が、同じ効果を生むわけではないことが分かりました。実存的孤立は孤独の一形態では決してなく、二者は似て非なるものであるということです。

一般化可能性は限られるが…

ヘルム氏らはその後、227名の被験者を対象に追跡調査を行い、実存的孤立を感じさせるトピックに晒された被験者は、孤独や中立的なトピックに晒された被験者よりも、死を連想する傾向が強いことを示しました。

ただし、92名を対象に行った2回目の調査では、同様の結果が再現されなかったため、実存的孤立と死の連想の間にはっきりとした因果関係があることは断定できませんでした。

ヘルム氏は、実存的孤立が不安バッファーを弱体化させる効果は比較的小さいため、それだけで全体像が説明できるわけではないと説明しています。また、今回の研究が1つの大学に通う大学生だけを対象に行われたものであることから、文化的背景や年齢などが違えば異なる結果が得られる可能性もあると弁明しています。

このように一般化可能性に限りはあるものの、この研究が将来に繋がる重要な情報を私たちに提供してくれていることに違いはありません。

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「こうした研究が長い時間を掛けて、複雑化が進む社会における人間関係や、自分が周囲に評価・理解されていることを個人が感じる仕組みを、より細やかに理解するための手助けになることを望んでいます」と、ヘルム氏は語っています。

 

これまであまり着目されなかった「孤独のパターン」ですが、思うような結果が出なかったとはいえ、着目され研究されることにまずは意義があるのではないでしょうか。

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reference: psypost / written by まりえってぃ

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