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「太陽系規模の砂嵐」が地球に氷河期をもたらし、生物を多様化させたという壮大な新説が登場

2021.01.27 Wednesday

2019.09.21 Saturday

Credit:NASA/JPL-Caltech

Point

■5億年ほど昔、地球上では生物の多様性が爆発的に増加した

■「オルドビス紀の生物大放散事変」と呼ばれるイベントでは、地球の寒冷化が発端だったと考えられている

■この寒冷化の原因について、小惑星の衝突により発生した粉塵が太陽系を包み込み、太陽光を遮ったためだという壮大な説が発表された

宇宙には予想外の「匂い」が漂っている

生物が劇的に多様化した地球イベントというとカンブリア大爆発が有名ですが、これは一瞬の内に突然生物が多様化したのではなく、長い期間の中でゆっくりと進行した出来事だと考えられています。

その原因の1つが、地球の大規模な気候変動であり、特にカンブリア爆発から7000万年後のオルドビス紀中期に海洋生物の多様な生態系が確立されています

この原因と言われているのが、オルドビス紀中期以降に訪れた氷河期です。

この氷河期の発生理由については火山活動や小惑星の衝突による説が有力ですが、氷河期の発生との関連を否定する研究などもあり、まだはっきりとした見解が示されていません。

この問題について、今回、地球に寒冷化をもたらしたのは小惑星崩壊によって発生した太陽系を覆うような宇宙規模の砂嵐だった可能性が発表されました。

この論文は、スウェーデンのルンド大学の研究者らにより発表され、9月18日付けで査読付き科学ジャーナル「Science Advances」に掲載されています。

An extraterrestrial trigger for the mid-Ordovician ice age: Dust from the breakup of the L-chondrite parent body
https://advances.sciencemag.org/content/5/9/eaax4184

オルドビス紀の生物多様化イベント

Credit:depositphotos

地球で最初に大規模な多様化が起こったのはカンブリア紀ですが、その後訪れたオルドビス紀にも海洋生物の大規模な多様化と大絶滅が発生しています。

これを「オルドビス紀の生物大放散事変(Great Ordovician Biodiversification Event、GOBE)」と呼びます。

このオルドビス紀に、大規模な氷河期が発生しました。このとき、地球全体で緩やかな寒冷化が進行し、それぞれの気候帯ごとに生物の寒冷化適応が進んだことで、種の多様化が起きたと考えられているのです。しかし、その後の氷河期では生物の大絶滅が発生します。

これまで、このオルドビス紀の氷河期発生の原因は、小惑星が地球に衝突したためという説が有力でした。

これは地質調査などで明らかになっていることで、約4億6600万年前に木星と火星の間の小惑星帯で、150km規模の巨大な小惑星が、他の天体との衝突によって崩壊したことがわかっています。この小惑星崩壊による破片が地球に降り注ぎ、オルドビス紀の氷河期を引き起こしたというのです。

ただ、降り注いだ小惑星の破片は小規模のものが多く、地球に気候変動を及ぼすほどのものは見つかっていません。また、大きな小惑星の衝突は、オルドビス紀の生物多様化や寒冷化の開始時期から200万年近くズレがあるなどの研究が報告されており、寒冷化と小惑星の崩壊を直接結びつける証拠が上手く示されていませんでした。

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