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太古の地球生物を食い尽くした「奇妙な古細菌の一族」の起源に迫る研究

2021.01.27 Wednesday

2020.01.18 Saturday

太古の地球を荒らしまわる直前の様子/Credit:nature
point
  • 私たち多細胞動物の先祖の真核生物は、他を取り込む力を持っていた
  • 真核生物は古細菌から別れた一派から生まれた
  • 古細菌と真核生物の間をつなぐミッシングリンクにあたる生命が発見される

現在の地球を覆う多細胞の動物は、すべて真核生物という細胞によって作られています。

しかし、真核生物がどこから、どうやって現れたかについては謎が多く残っていました。

今回、国立研究開発法人海洋研究開発機構の井町寛之氏らの12年にも及ぶ調査・研究によって、深海堆積物から真核生物の祖先に近縁な微生物の培養に世界で初めて成功。これは古細菌と真核生物の間をつなぐミッシングリンクであり、真核生物の起源の謎に迫るものです。

研究内容は1月15日付の、学術雑誌「nature」に掲載されています。

Isolation of an archaeon at the prokaryote–eukaryote interface
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1916-6

真核生物の謎に包まれた起源

太古の地球を荒らしまわる直前の様子/Credit:nature

現在の地球の生命は、「細胞の作り」を基準にすると3種類に分けられます。

極端な環境を好む「古細菌」、地球上に広く分布して生態系の分解者として働く「細菌」、そして私たち人間を含む全ての多細胞生物が分類される「真核生物」です。

生命が生まれてから最初の20億年、地球生命は細菌と古細菌という2種類の微生物だけで構成されていました。

古細菌は、高温や高濃度の酸性、塩分といった極端な環境で生きていることが知られる生物です。

一方で細菌は地球に広く存在し、生態系の分解者、バクテリアなどと呼ばれています。

しかしこの均衡は、古細菌の一部から変異した生物によって、徹底的に破壊されてしまいます。その生物は他者の能力を取り込み、自分の力にするという、凄まじい「能力」をもっていたのです

彼らは運動能力を得るための鞭毛、酸素を利用するためのミトコンドリア、光をエネルギーにするための葉緑体など、次々に他の生物の細胞を自分の体にとりこみ、強化していきます。

それまでの地球生命は、環境に適応することで進化を繰り返してきましたが、新たに登場した真核生物と呼ばれる一族は、他者を取り込むことで、環境に対する適応力を身に付けていきました。

そして、その適応能力を活用し、先輩にあたる細菌と古細菌を食い尽くしながら、地球最初の多細胞生物へと進化してゆき、植物から人間まで、多様な生態系をつくりあげたのです。

真核生物は動物となり、植物となり、現在の地球を文字通り覆い尽くしていますが、その最古の姿、すなわち、古細菌から枝分かれした直後の様子は、いままで謎に包まれていました

次ページまだ無垢な存在を求めて熱水噴火口の周囲の泥を掘る

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