未知の古代ウィルスをチベットの氷河から発見

biology 2020/01/25
アイスコアが採取されたグリヤ氷冠は氷の壁に囲まれている/Credit:OSU
point
  • チベットの氷河から、現代の細菌に汚染されていない氷を取り出すことに成功
  • 取り出された氷から28種類の未知のウィルスが発見された

2019年3月、シベリアの永久凍土から見つかったマンモスは、筋肉や内臓の組織も残るほど保存状態が良く、マンモス復活プロジェクトも進行しているほどです。

このように、氷は古代からのタイムカプセルの役目を果たすことがあります。しかし、それらすべてが私たちにとって嬉しい贈り物になるとは限りません。

最近、中国のチベット高原の氷河のアイスコア(氷河深層から採掘された氷のサンプル)から、未知のウィルスが発見されました。このウィルスは私たちに古代の情報を提供するだけでなく、現代に古代ウィルスが広まる可能性を示唆しています。

この発見の詳細は1月7日「bioRxiv」に掲載されました。

Glacier ice archives fifteen-thousand-year-old viruses
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.01.03.894675v1.full

アイスコアから汚染されていないサンプルを取り出す

(A)アイスコアが採取されたグリヤ氷冠 (B)アイスコアの位置 (C)アイスコアが採取された深度/Credit:biorxiv

氷河にはさまざまな微生物が冷凍保存されていますが、それらの古代微生物を研究するのは非常に難しいことでした。なぜなら、アイスコアを取り出しても、それらが現代の細菌によって簡単に汚染されてしまうからです。

チベットから採取された2つのアイスコアは、それぞれ1992年と2015年に採取されたものです。当時、アイスコアを扱う際に微生物汚染を避けるための特別措置がなされていなかったため、それらの外層は既に汚染されていました。

しかし、科学者たちはアイスコア内部がまだ汚染されていないことに気付きました。それゆえ、アイスコアの汚染された外層を取り除き、内部を新たに汚染させずに取り出すことにしました。

汚染されたアイスコア層の除去/Credit:biorxiv

-5℃の低温室をつくり、その部屋の中で作業を進めます。まず、汚染されたアイスコアの外層0.5cmを切り取ります。さらに、エタノールで洗浄し0.5cm分の層を溶かします。最後に無菌水で0.5cm分の層を洗い流します。3段階の処置によって、汚染されていない層に到達することができました。

アイスコアから未知の古代ウィルスが発見される

Credit:Pixbay

複雑な手順によって露出したアイスコア内部からは33のウィルスグループが発見されました。しかも、このうち28種類のウィルスは現代では知られていないものでした。

チベットの氷河タイムカプセルには古代ウィルスが入っていたのです。この贈り物は、私たちに2つの大きな影響を与えるものとなります。

1つは、古代の情報です。アイスコアの中の微生物たちは当時の環境情報を教えてくれます。実際に、今回調査された2つのアイスコアに含まれる微生物の種類はそれぞれ大きく異なっており、堆積時の気候が全く異なっていたことを示してくれました。

2つ目の影響は、古代ウィルス拡散の可能性です。研究者たちは「最悪のシナリオだが、気候変動により氷が融解した場合に、古代の未知ウィルスが解き放たれる可能性がある」と述べています。もちろん、未知の古代ウィルスが拡散したからといって人間に感染するとは限りません。しかし、可能性はゼロではないのです。

研究者たちは「気候変動によって氷河が溶けてしまうなら、古代ウィルスアーカイブは失われる可能性がある」と指摘しています。氷河から古代の情報を得るためにも、また今後に備えるためにも、古代ウィルスの研究は重要性を増していくでしょう。

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reference: livescience / written by ナゾロジー編集部

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