盲目の人の脳に直接信号を送って視界を与える視覚インプラントが登場

technology 2020/02/08
Credit:RUSS JUSKALIAN
point
  • 脳に直接信号を送って視覚を与える電子器具が開発された
  • 器具を装着することにより、盲目の女性は文字や簡単な物の形状を把握できるようになった

私たちが見ている景色は、目ではなく脳で感じ取っているものです。

目に入ってきた光は、網膜という「変換器」によって電子に変換され、電子信号は視神経という「通路」を通って脳に伝わります。

このような視覚の仕組みからすると、理論的には、目や視神経が機能していなくても、脳に電子信号さえ伝われば視覚が得られるはずです。

そして最近、この理論がついに実証されました。

スペインのミゲルヘルナンデス大学の神経工学部のエドゥアルド・フェルナンデス氏らの研究によって、脳に直接信号を送って視力を与える脳内インプラント(脳に装着する電子器具)が開発されたのです。

このインプラントを装着することで、患者たちは全盲であっても簡単な視覚を得ることができます。

研究の詳細は、「MIT Technology Review」に掲載されました。

脳に直接信号を送る視覚インプラント

視覚野/Credit:intechopen

盲目の原因は「目」だけではありません。網膜と脳を繋ぐ視神経に損傷がある場合、人工の目や網膜を作成しても視力は回復しないのです。

このような患者たちも視力を取り戻せるよう、今回研究者らは脳に直接信号を送り、視覚を得させる新インプラントを開発しました。

従来の電子インプラントには、ペースメーカーや人工内耳などがあります。

人工内耳は、マイクで拾った音を電気信号に変換し、聴神経に伝える装置であり、世界中の50万人以上の患者が利用しています。

脳に装着されたインプラント/Credit:RUSS JUSKALIAN

今回の新しい視覚インプラントは、人工内耳の「視覚版」と言えるものです。

小さなカメラが取り付けられた眼鏡が視覚情報を取り入れ、コンピューターを介して電子信号に変換されます。

その後、電気信号は頭蓋骨後ろの視覚野に埋め込まれた脳内インプラントへと送り込まれます。

インプラントは100本の電極から成り立っており、電極から電子信号を受け取った視覚野は、患者に視覚を与えるのです。

新インプラントによって視力が回復した女性

ゴメスの脳の電気信号。各ボックスはそれぞれの電極に対応している。波線はニューロンからの信号を示している/Credit:RUSS JUSKALIAN

新しい視覚インプラントのテストに応じたのは、ゴメスという全盲の57歳の女性。

彼女は42歳の時、中毒視神経症ゆえに目と脳を繋ぐ神経束が破壊されてしまいました。その後16年間、光さえ感知できない世界で生きてきたのです。

しかし、脳手術によるインプラント装着と1か月の調整後、彼女は最大10×10ピクセルの視覚を獲得しました。

文字や紙に印刷された形や人物、ドアフレーム、歩道などの基本的な形状を知覚できたのです。

また、脳に直接送られる信号によって、パックマンのようなシンプルなコンピューターゲームも楽しめたとのこと。

Credit:RUSS JUSKALIAN

新しい視覚インプラントは長期使用が認められていないため、6か月後には取り外しましたが、取り外し後のゴメス氏の体調も良好のようです。

ゴメス氏はこのシステムに深く感動しており、「インプラントを装着したままでいいなら、そうしたいし、新しいバージョンが使用可能になれば、最初に利用したい」と述べました。

研究者たちは今後、脳の両側にインプラントを4~6個装着することで、60×60ピクセル以上の視覚を与えることも可能だと考えています。

彼の目標は、世界中の3600万人の盲人たちのうち、できるだけ多くの人の視力を取り戻すことです。

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reference: technologyreview / written by ナゾロジー編集部

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