土星の月タイタンは、予想より”100倍早く”土星から遠ざかっている

space 2020/06/11


太陽系の現在の状態をシミュレーションしたNASAのEyes on the Solar System. Credit: NASA/JPL-Caltech

point
  • 土星の衛星タイタンはこれまで年0.1cm程度で土星から離れていると予想されていた
  • 最近の研究による測定の結果、タイタンは土星から離れる速さは予想の100倍近いと判明
  • タイタンはかつてずっと土星に近い位置にあり、45億年かけて現在の120万キロの距離まで移動した

土星に浮かぶ衛星タイタンは、少しずつですが主星である土星から離れています。

これは特殊なことではなく、地球の月にも見られる性質で、重力の差によって生じる潮汐力の影響により衛星は少しずつ主星から離れていきます。

これまでの予想では、タイタンが土星から離れる速度は、年間0.1センチメートル程度という非常に微々たるものだと考えられてきました。

しかし、最近の研究ではもっとずっと速く、従来予想の100倍近い速さでタイタンは土星から離れていることがわかったのです。

これは以前から信じられていたよりも、土星の衛星やリングが、ずっと動的に形成され進化していることを示唆するものです。

土星の月 タイタン

土星の月タイタン。/Credit:NASA

タイタンは太陽系の中でもかなり特殊な衛星です。

サイズは水星よりも大きく、太陽系で唯一大気を持つ衛星です。そしてメタン、エタンなどが液化した川や海を持っていて、その下には水による氷の層も存在しています。

場合によっては生命を宿す可能性さえ考えられる衛星なのです。

このタイタンは、これまでの理論では土星から年間0.1センチメートルの距離で離れているものの、最初から現在のような軌道距離で形成されたと考えられてきました。

衛星の軌道が拡大していくことは珍しいことではなく、私たちの地球に浮かぶ月も、年間3.8センチメートルという割合で地球から遠ざかっています。

ではいずれ月は地球から離脱してしまうのか? と心配になりますが、このペースで計算した場合、60億年後に膨張した太陽に地球が飲み込まれるまで、月を失うことはありません。

タイタンも同様で、大きく土星との位置関係が変わっていることはないと考えられてきました

しかし、10年渡ってタイタンの軌道を測定した2つの研究によって、それが間違いであることが示されたのです。

予想より100倍速く遠ざかるタイタン

Credit: NASA/JPL-Caltech

その研究の1つはアストロメトリー(位置天文学)と呼ばれる方法で、タイタンの背景にある星との位置関係を正確に測定するものです。

もう1つは放射測定と呼ばれる方法で、こちらはタイタンの重力影響を受けたNASAの土星探査機カッシーニの速度を測定したものです。

これらの測定の結果、タイタンの移動速度は標準的な潮汐理論の推定よりはるかに早いことがわかりました。これは2016年にフラー氏が提案した理論予想とも一致しています。

フラー氏の理論では、タイタンは土星を強く振動させる特定の周波数で重力的に押し出されていると予想されています。これはブランコを漕ぐとき、足を大きく振ることで、より勢いよく高い位置へと移動できる原理に似ています

これによりタイタンは今までの予想よりずっと速い、年間11センチメートルという速度で土星から遠ざかっていることがわかったのです。

これは従来予想の100倍以上の速さです。

この原理は「共鳴ロック理論(The resonance locking theory)」と名付けられていて、現在は他の連星系や、太陽系外惑星でも同様のことが物理学的に起こるかどうかの研究が進められています。

こうした結果は13年間土星を観測し続けたカッシーニから得られたデータをもとにしています。

カッシーニの行ったまったく異なる2つの測定データから、完全に一致する結果が得られたことで、タイタンの予想よりはるかに速い移動速度を明らかにすることが出来ました。

この研究は、元NASAジェット推進研究所の研究者で、現在はパリ天文台に所属するValéry Lainey 氏を筆頭とした研究チームより発表され、6月8日付で天文学に関する科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載されています。

Resonance locking in giant planets indicated by the rapid orbital expansion of Titan
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1120-5

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reference: phys,scitechdaily/ written by KAIN
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