窪地を利用したコロニー
クレーターや、谷間など自然の窪地を利用して、その上にこのシステムを設置すれば、温室になるだけでなく放射線のシールドとしても機能します。
放射線遮断は、このシステムの非常に重要な側面です。
放射線の遮断は通常金属パネルを用いますが、これは放射線が金属原子にあたった時に生じる二次粒子をシャワーの様に放出させてしまいます。
金属以外のもので放射線を遮断しようとすると、非常に厚みをもたせる必要が出てきます。
それに対して、水や土を利用した放射線遮断は、二次粒子の発生もなく効果的です。厚みの問題は、ドームのようにコロニーの上部構造とすることで解決できます。
また、この他の大きな利点として、バイオプラスチック変換器は、タンパク質や脂質、化学肥料の材料(窒素、リン、マグネシウムなど)のミネラルも副産物として生成できます。
最初の段階が困難なようにも聞こえますが、藻類が成長していくことで、ポリマーブロックと酸素を生産していくというこの手法は、時間とともに指数関数的に規模を拡大させることが可能です。
藻類は、二酸化炭素と水、少量の肥料さえあれば延々と自己複製を続けていけます。
アルテミス計画のような、「持続可能な月面調査」におけるNASAの長期ビジョンでも、現地の資源をどう活用して自給自足を実現するかに主眼が置かれています。
火星や、その他の惑星におけるミッションでも、水氷やレゴリス、二酸化炭素など、採取して利用して、地球からの補給を少なく済ませることは、基本的な計画です。
このプロジェクトがどこまで実現できるか現段階ではわかりませんが、石油を使わないバイオプラスチックを利用した技術は、地球の生活でも恩恵をもたらす研究です。
月や火星に人類が生活できるコロニーができるかも、という話は少しずつですが現実味を帯びてきています。
人類が地球外の星で暮らすSF時代の到来は、意外と近いのかもしれません。
この研究は、宇宙資源円卓会議(SRR)の20周年に合わせて開催されたPlanetary & Terrestrial Mining Sciences Symposium (2019年6月11日~14日)で発表されました。
宇宙、素粒子、AI、遺伝子、歴史、心理学など、様々な角度から身近な「謎」を追求しています。
Nazologyについて
記事一覧へ