ハワイの地下深くに、島を生み出す”火山の根っこ”みたいな構造が見つかる!

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地震のエコーによってコア-マントル境界を調査しているイメージ図。/Credit: Doyeon Kim/University of Maryland
point
  • コア-マントル境界に既存のデータよりも広範囲に高密度で高温の岩石構造が発見された
  • 新たな研究は、数千の地震波から境界のエコーを特定することに成功し、この事実を明らかにした
  • 新たな地中の構造を知ることで、プレートテクトニクスや地球進化の手がかりが得られるかも知れない

地球のコアに関する研究は、これまでもたびたび話題になっていますが、3000km以上地下にある、コア-マントル境界の様子を詳しく知ることは至難の技です。

人類は今でもだいたい12km程度までしか地面を掘る技術は持っていません

そのため、地球深部を調査する研究では、地震で発生した音波(地震波)が地中を伝わるエコーを記録して分析するという方法を使っています

これまでの研究は、一度に数個のエコーを見て調査を行っていましたが、新たな研究は数千のエコーを一度に見ることで、まったく新しい視点で地球深部の様子を探ることができると報告しています。

そして、研究者はこの方法により、今まで明らかになっていなかったコア-マントル境界の詳しい構造を明らかにしたのです。

一体地球深部に何が見つかったのでしょうか?

地震波エコーで地球深部を探る

地球深部の構造を探る場合、穴を掘って覗くわけには行きません。

地質学者は内科医が外側からの診断だけで体内の様子を知るように、外側から得られる情報だけで、何があり、何が起こっているかを推測します。

この際利用されるのが地震です。地震は地中に地震波を発生させ、何千キロメートルもの距離を伝わっていきます。

地震波は、密度や温度、組成の変化したポイントにぶつかると、速度を変えたり、屈折したり、散乱したりして多くのエコーを発生させます。

体内の診察でも超音波エコーを用いることがありますが、それと似たような原理を、地震を使って行うのです。

Credit: Doyeon Kim/University of Maryland

そして、地球の各所に観測所を設け、このエコーを検出していきます。何らかの構造に近い観測所では、エコーは他の地域より速く検出されます。

また、構造が大きければその分検出されるエコーも大きいものになります。

こうして科学者は、あちこちの観測所で記録されたエコーの移動時間や振幅を解析して、はるか地中深くに隠された岩石の物理的性質をモデル化するのです。

研究者たちが注目したのは、せん断波と呼ばれる種類の波です。これは進行方向に対して垂直に揺れる波のことで、つまり横波(S波)のことです。

Credit:科学技術庁

このS波がコア-マントル境界に沿って移動したとき発生するエコーを、この研究では探したのです。

しかし、ただ単純にエコーを探したわけではありません。彼らは通常数個のエコーしか調べないこの調査で、一度に数千のエコーを調べたのです。

地震波の数千のエコーを一度に調べる

通常この手の研究では、地震動記録(サイズモグラム)と呼ばれる単一の地震記録を見ます。

ただ、このデータだけでは、回析したS波のエコーは、ランダムなノイズと区別することが困難です。

しかし、一度にたくさんの地震動記録を見れば、そこに隠れた類似点やパターンから、隠されたエコーを識別することができるかもしれません。

こうした考えから、今回の研究者たちは、「Sequencer(シーケンサー)」というAI(機械学習アルゴリズム)を用いて、1990年から2018年までに記録されたマグニチュード6.5以上の地震動記録を分析したのです。

研究者たちが着目したのは、太平洋盆地を移動する地震波です。これは実に7000に及ぶ地震動記録でした。

Sequencer」はもともと遠くの星や銀河の放射パターンを解析する目的で、ジョンズ・ホプキンス大学とテルアビブ大学で共同開発されたAIです。

今回の研究は、これを地震記録の解析に利用したのです。

地球科学におけるAI技術は飛躍的に進歩していて、「Sequencer」のような手法を使えば、数千におよぶ地震エコーを体系的に分析して、これまで謎に包まれていたマントル底部の構造を新たな視点で見ることができます。

黄色い星が地震発生源。青い三角が観測点。新たな研究は地下の高密度の構造がこれまで知られていたよりはるかに広範囲にあることを明らかにした。/Credit: Doyeon Kim/University of Maryland

この結果、すべての地震波経路の約40%にエコーが発生してることが明らかになりました。

研究者たちはエコーがもっと稀なものだと考えていたので、これは非常に驚くべき発見でした。

分析結果は、ハワイのはるか地下のコア-マントル境界に非常に高密度で高温の領域が、広範囲に存在していることを示しています。

こうした構造は、ULVZ(超低速度帯)として知られていて、火山の根っこに当たるようなものです。ここから高温の岩石が上昇して火山島を形成します。

しかし、今回明らかになったULVAは予想を超えた巨大なものでした。ハワイの地下に見つかった構造は、これまで知られている中でも最大のものだったのです。

広い範囲に渡って、コア-マントル境界の構造を、これほど詳細な分解能で包括的に示したのは初めての成果だといいます。

この研究は、プレートテクトニクスや地球進化についても新たな手がかりを提供してくれるものになるだろうとのこと。

AIの分析能力によって、地球の調査も新たなステージに到達しているのかも知れません。

この研究は米国メリーランド大学の研究者D. Kim氏を筆頭とした研究チームより発表され、論文は科学雑誌『Science』に6月12日付で掲載されています。

Sequencing seismograms: A panoptic view of scattering in the core-mantle boundary region
https://science.sciencemag.org/content/368/6496/1223

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reference: phys, University of Maryland/ written by KAIN

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