【笑撃】ペンギンが「糞を噴射するときの軌道」を物理学的に計算!? イグノーベル賞研究を日本人が発展させる

physics 2020/07/12

Credit::arXiv:2007.00926 [physics.bio-ph],田島博之et.al(2020)
point
  • ペンギンが糞を飛ばすときの圧力と飛距離を計算したイグノーベル賞研究を日本の研究者がアップデートした
  • 新たな研究は、噴射した糞の軌道を考慮し、より正確に噴射時の圧力を計算している
  • これは水族館の飼育員が彼らの糞を避けるために、重要な知見となる可能性がある

水族館でペンギンを眺めていたら、突然すごい勢いで糞を噴射するところを目撃してげんなりした、という人は多いのではないでしょうか。

ペンギンは抱卵時期に入ると巣から離れることなく卵を守り続けます。しかし、そのまま巣の中で糞をしてしまっては大切な巣を清潔に保つことができません。

そこでペンギンは、排便の際にはお尻を突き出し尾を軽く持ち上げて糞を勢いよく巣の外へ噴射する能力を手にしたのです。

ペンギンはその力によって快適で清潔な生活を送っているようですが、周囲の生物にとっては脅威となります。下手をすれば自分にひっかかってしまうかもしれないのです。

そこで、日本の高知大学の研究者は、桂浜水族館の協力の下、ペンギンの噴射する糞の軌道まで計算に含めた、ペンギンが高い場所から排泄を行った場合の、糞の飛距離の研究をおこないました

ペンギンの排便に関する先行研究

Penguin blasts other penguin with shit, who then proceeds to just shake it off. from r/natureismetal

今回の研究には先行研究があります。

2003年、今回とは別の研究チームがアデリーペンギンの総排泄腔から糞が噴射されたときの飛距離と、そのために必要となる腸内の圧力を計算したのです。

この研究のきっかけはMeyer-Rochow博士が日本の北里大学で行った講演でした。博士は日本の学生に南極で撮影したペンギンの巣のスライドなどを見せ解説を行い、学生たちから質疑を受け付けました。

1人の女子学生が、ペンギンの巣の周りにピンク色の放射状の線がいくつも走っているのを見て、「鳥は巣を飾りますが、ペンギンはどうやってこのように巣を飾ったのですか?」と質問しました。

博士は「ペンギンが巣の端へ行ってお尻を突き出し尾を持ち上げて糞を噴射することで、このような跡ができるんですよ」と説明しました。

会場は笑いに包まれましたが質問者の女性は赤くなって静かに座ったそうです。

しかし、博士はこの質問に意義深いものを感じました。

彼はスライドの写真を注意深く見返し、巣の周囲30~40cmの距離に伸びた縞模様を作るために、ペンギンの体内にはどれだけの圧力が蓄積されるのだろうか、考えました。

そこで博士は同僚のGal博士とともに、これを計算する研究を開始したのです。

その結果判明したペンギンの排便の圧力は 10 kPa (0.1気圧)~ 60 kPa (06気圧) で、自動車のタイヤの半分近いものでした。これは人間が排便する場合のおよそ3倍です。

そして、糞の跡がピンク色になるのは、ペンギンがオキアミ(エビ)を食べていたためです。魚を食べた場合、ペンギンの糞は白っぽい色になり、食餌で色が変化します。

この研究によって、博士は北里大学の学生が行った質問に完璧な形で回答したのです。

ただ巣から放射状に糞の跡が伸びる理由は、ペンギンが狙ってやっているのか、風の影響なのかわかりませんでした。博士はこれは今後の研究課題だと述べています。

この興味深い研究は、意義深く笑える研究として2005年イグノーベル 流体力学賞を獲得しました。

軌道距離を考慮したペンギンの排便圧力の再考

今回の研究チームは、こうした過去の研究では、圧力計算において重要となる噴射便の軌道距離が考慮されていないという問題点を指摘しました。

Meyer-Rochow博士の研究では、糞の飛距離は地面についた跡を参考にしていました。これは単純に噴射便の飛んだ水平距離です。しかし、液状の便は噴射されたとき、放物線の軌跡を描いて飛ぶはずです。

となると実際の飛距離は、地面に残った便の跡よりも長いということになります。

これを考慮に入れなければ、ペンギンの排便時の圧力は正確に算出できません。

またペンギンは常に地面の上から水平に便をするわけではありません。少し高い岩場から糞を飛ばす可能性もあるのです。こうした場合の糞の飛距離は、軌道計算も考慮しなければ正しく導くことができません。

もし高い位置にいるペンギンの糞の噴射距離を見誤れば、飼育員に危険が及ぶかもしれません。より一般的なペンギンの便の動きを理解することは非常に重要です。

そこで、研究チームはペンギンが糞を飛ばした軌跡の高さの平均を調べ、それを組み込んで圧力計算式をアップデートさせました。

空気抵抗のない場合の発射体の軌道は、ニュートンの運動方程式で記述できます。

またこの計算には、糞が非常にゆるい非粘性流体の場合、エネルギー保存に関するベルヌーイの定理が適用できます。

さらに便の粘度による飛距離の影響は、ニュートン流体から推定することができます。

フンボルトペンギンが高いところから便を発射する様子。/Credit::arXiv:2007.00926 [physics.bio-ph],田島博之et.al(2020)
こうしたアプローチから再計算された高い位置から放たれるペンギンの糞便の最大飛距離は、1.34メートルとわかりました。

これは人間とペンギンが同じ腹圧だったと考えた場合、人間のうんちが3m飛ぶことになると研究者は述べています。

なお、この最大飛距離の計算では、ペンギンの便が非常にゆるい状態を想定していて、お腹を壊して完全流体として便が振る舞った場合という条件が付いています。

ペンギンの体調が良ければ、糞の飛距離はもう少し短く抑えられるかもしれません。

研究者たちは、こうした研究がペンギンの飛び散る糞から飼育員を救うために重要であり、またこうした危険を回避するための、新米飼育員へのレクチャーにおいても有用だと述べています。

ペンギンの飼育は、糞便を浴びる危険と隣り合わせの厳しい仕事です。この研究が1人でも多くの飼育員を救ってくれることを祈らずにはいられません。

この研究は、高知大学の田島裕之氏と桂浜水族館の藤沢史弥氏の共同研究チームより発表され、論文は現在プレプリントサーバーarxivに公開されています。

Projectile Trajectory of Penguin’s Faeces and Rectal Pressure Revisited
https://arxiv.org/abs/2007.00926v1

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reference: phys,bioforthebiobuff,arstechnica/ written by KAIN
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