世界最古の「動物の巨大精子」が1億年前の琥珀から発見される!

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貝形虫類の巨大精子の3D画像
貝形虫類の巨大精子の3D画像 / Credit:NIGPAS

ミャンマーでおよそ1億年前の琥珀から貝形虫類の精子が発見されました

精子のような軟細胞のサンプルが発見されることは稀で、これまででもっとも古い精子のサンプルは1700年前のものでした。

今回の発見はそんな最古のサンプルの発見記録大幅に塗り替えるものです。

何より貝形虫類は体の10倍にも及ぶというとんでもなく巨大な精子を持つ種として知られていて、その特殊な進化の秘密に迫るためにも重要なサンプルになるといいます。

この研究は、中国科学院南京地質古生物研究所(通称: NIGPAS)とイギリス・ロンドン大学のクイーン・メアリー校の共同による国際研究チームより、9月16日付けで科学雑誌『Royal Society Proceedings B』に発表されました。

世界最古の精子のサンプル

ミャンマーで発見された琥珀が保存していたのは、白亜紀の「Myanmarcypris hui」と呼ばれる甲殻類の群れです。

「Myanmarcypris hui」は甲殻類の中でも貝形虫類と呼ばれる種類のもので、これはミジンコのような外見をした小さな生き物です。

貝形虫類は約5億年前のオルドビス紀以降から存在していた種で、現代でもカイミジンコやウミホタルなどが、ほとんど姿を変えずに生き残っています

琥珀の中には、貝形虫の群れが39体含まれていて、中には交尾をした直後のメスの個体も確認されました

貝形虫類の後尾のイメージ画像
貝形虫類の後尾のイメージ画像 / 貝形虫類の後尾のイメージ画像。/Credit:NIGPAS

このサンプルをX線マイクロCTで分析したところ、これらの種の軟組織を含めた高解像度の3次元画像を得ることができたのです。

古代の生物の軟組織を含めたデータは非常に貴重です。そして何より、この後尾直後のメスからは精子まで見つかったのです。

体の10倍!? 巨大精子を持つ貝形虫類の謎

現代の貝形虫類の巨大な精子
現代の貝形虫類の巨大な精子 / 現代の貝形虫類の巨大な精子。/Credit:R. Matzke-Karasz,qmul

貝形虫類は体の10倍にも及ぶ長さの巨大な精子を持つことが知られています。

人間の場合、精子のサイズは約0.05mmで自分の体と比べれば約3万分の1程度です。

それを考えると精子の長さが体の10倍というのは、ちょっと何を言っているのかわからないです、と言いたくなってしまいますが、貝形虫類は非常に長大な精子を小さく丸めて体内に保持しています。

2014年にオーストラリアの洞窟で発見された1600万年前の貝形虫類からは、長さ1.2mmの精子が発見されています。

そして今回ミャンマーで発見された新しい標本は、正確には約8300万年前のものと推定されていて、0.6mmの体長に対し含まれる精子のサイズは少なくとも0.2mmです。

サイズについてはまるで毛糸玉のように丸まっているため、正確にはわかりませんが、彼らの体長の3分の1以上に相当しており、すでにこの段階で人間の精子のサイズを凌駕しています。

彼らがなぜこのような巨大な精子を持つようになったかは生物進化の大きな謎の1つです。

貝形虫類はなぜ巨大な精子を持つのか?

貝形虫類
貝形虫類 / Credit:The Royal Society

今回発見された貝形虫類は、軟組織の多くが確認でき、生殖器や受精嚢(交尾後に相手の精子を一時的に貯めておく節足動物などが持つ器官)なども残っていました。

これは現代の種とほとんど形状が変わっておらず、彼らが古代から巨大な精子を持ち生殖を行っていたことを示しています。

巨大な精子を持つ理由は、メスが複数の相手と交尾する場合の競争において有利となる要素が存在するからだと考えられています。

これはメスの生殖器官に蓋をするという意味もあったのではと予想されているのです。

そして受精後は、この巨大な精子が成長を助ける栄養源としても利用されます。

ただ、体の小さい種が巨大な精子を持つことは、引き換えに高い代償を払う問題でもあります。

この巨大な精子での生殖を成立されるために彼らは生殖器官を巨大化させなければならず、これらの種の中には、体の体積の3分の1が生殖器官に占められているものも存在します。

このような特徴が、いつ獲得され、どのように進化していったかについては現在謎のままです。

貝形虫類を含め甲殻類は石灰化した殻があるため、化石として残りやすく、豊富な古代のサンプルが見つかっています。しかし、体の軟組織や精子自体は残らないため、その点についてはあまり詳しい研究が進んでいません。

今回の発見は、そんな巨大精子を持つ謎の多い彼らの進化を理解するために、大きな進展をもたらすことが期待されています。

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