木星がなければ”金星は温帯の居住可能惑星”だったかもしれない

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金星。
金星。 / Credit:ESA – C. Carreau

金星は硫酸を含む大気に、鉛も溶ける表面温度と生命を拒絶するような環境の惑星です。

しかしはるかな昔、金星は温帯で水もあり生命が暮らせる環境だった可能性も指摘されています。

科学雑誌『Planetary Science Journal』に9月4日付けで発表された新たな研究は、この金星の環境激変に木星が関与していた可能性を指摘しています。

もし木星がなかったなら、金星は温帯の生命が居住可能な環境の惑星のままだったかもしれないというのです。

初期太陽系で起きた木星軌道の移動

太陽系惑星軌道。
太陽系惑星軌道。 / Credit:en.Wikipedia

初期の太陽系で、「木星」は今よりもっと遠い場所に形成されたと考えられています。

これは小惑星帯の軌道形成や、海王星軌道に残る氷の残骸の分布などから推定されているもので、太陽系形成時の重力の影響などを計算していくと、木星は形成後に太陽へ近づくように内側の軌道へ移動したことは明らかなようです。

ただその移動がどのように起きたのかを正確に把握することは困難です。一部のモデルでは木星は数億年かけてゆっくりと太陽系の内側に移動してきたと考えられていますが、別のモデルでは火星軌道まで一気に近づいた後、現在の位置まで戻っていったとも考えられています。

それが実際どのようなものであったにせよ、木星の移動は太陽系内の惑星の軌道に大きな影響を与えたことは確かです。

なにせ木星は太陽系の他の惑星の質量を足し合わせた数値の2.5倍もの質量を持っているのです。

真円に近い軌道を持つ金星

金星軌道。
金星軌道。 / Credit:en.Wikipedia

金星」は非常に珍しいことに完全に近い円軌道を持っています

通常の惑星軌道はもっと楕円です。

惑星軌道がいかに円に近いかという値は離心率で表されます。完全に円の場合離心率は0であり、円からもっとも遠い場合離心率は1になります。

離心率1はもはや軌道を形成できず星系から飛び出していってしまいます。

金星の離心率を計算した場合0.006となり、太陽系のどの惑星より軌道は真円に近いものです。ちなみに地球の離心率は0.0167です。

しかし、他の惑星からさまざまな影響を受けて形成される軌道が、最初からこれほど円に近いということは考えにくい事実です。

そこで研究チームは過去にさかのぼって太陽系の重力的な影響をシミュレートする複雑なモデルを作成し、惑星が互いに引っ張りあったとき金星の軌道がどう変化するか計算しました。

するとかつて、木星が太陽に近づいた可能性が高いときの金星軌道は離心率0.3であった可能性が出てきたのです。離心率0.3はかなり極端な楕円軌道です。

木星の移動によって、金星軌道の軌道は引き伸ばされていたのです。

金星が最終的に円軌道に落ち着いたのは、金星が表面に持っていた海の潮汐力が影響していると研究チームは考えています。

極端な楕円軌道は、金星と太陽の位置関係から表面を急冷と過剰加熱に晒して惑星の水分を奪っていってしまったのです。

数学的モデルの計算から導かれる金星生命の可能性

木星。
木星。 / Credit:depositphotos

最近の研究では、金星上空の大気にホスフィンという微生物の存在を示唆する成分が検出されるなど、金星に生命の存在する可能性は高まっています

金星は惑星サイズや密度においても地球に非常に近い惑星で、かつては海を持ち居住可能な環境であったという可能性も、いくつかの研究から示されています。

今回の研究は、そうした可能性を金星自体の観測データは用いずに、複雑なコンピュータモデルと賢明な推察に頼って計算から導き出した特異な例と言えるでしょう。

木星の影響で金星は軌道をゆがめ、太陽放射によって海を失い、大気中が大量の水蒸気で満たされて温室効果を高めることになりました。

それは地殻の接合部で潤滑剤の役割を果たしていた液体まで奪い、プレートテクトニクスを停止させ、大気中へ大量の二酸化炭素を放出させる原因になりました。

こうした悪循環が、金星を現在のような地獄の環境に変えてしまったと考えられます。

木星の影響がなければ、太陽系には地球と金星という液体の海をたたえたよく似た惑星が並んで回っていたのでしょうか?

しかし、木星はその重力で外から飛来する多くの小惑星を吸い寄せ、地球を隕石の被害から守っているという側面もあります。木星がなかったら、別の要因で地球は今の姿を保てなかったかもしれませんね。

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