びっしり生えたトゲは捕食対策
装甲イモムシの化石は、ミャンマーで採取された約1億年前の琥珀中に見つかったものです。
研究を行ったルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのJoachim Haug氏によると、イモムシの胴体は12の体節に分かれており、それぞれに、少なくとも10本ずつトゲが生えていました。
トゲは、鳥などの捕食者から身を守るためのものです。
最初のうちは食べられても、「トゲが喉に引っかかって食べにくい」ということを鳥が種として学習し、徐々に食べられなくなった可能性もあります。
ただし、この時代の鳥は、羽や羽毛が進化した小型の鳥類型恐竜のことを指し、昆虫たちにとって最大の脅威でした。
また、装甲イモムシは、「チョウ目(チョウやガ)」として知られるグループの幼虫時の形態と見られます。
チョウ目は、恐竜時代に出現した昆虫群ですが、現在までに、同時代にあたる成虫の化石はほとんど見つかっておらず、幼虫の標本もわずか4つのみです。
Haug氏は「チョウ目が生涯のほとんどの期間を幼虫として過ごすことを踏まえると、化石標本の少なさは調査の妨げになっている」と話します。
いずれにせよ、装甲イモムシの存在は、約1億年前の白亜紀にはすでにチョウ目が幅広い形態パターンを有していたことを示唆します。
しかし、恐竜時代のチョウ目はあくまでマイノリティであり、当時の昆虫としては「カゲロウ目」が最も繁栄していました。
昆虫の誕生は恐竜よりはるか昔の4億8000万年前とされ、カゲロウは「最初に空を飛んだ生き物」として、約3億5000万年前に出現しています。
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その後、白亜紀末の約6600万年前に巨大隕石が衝突し、非鳥類型恐竜が絶滅、カゲロウ目も大幅に減少しました。
それに代わって、空を自由に飛べる鳥類やチョウ目が一気に繁殖し、今につながります。
装甲イモムシが、この大絶滅の危機をどう迎えたかはまだ藪の中です。