HAYSTAC実験のアーティストイメージ。マイクロ波空洞(金の円柱)がアクシオン(紫の粒子)と共振するよう周波数を調節している。これが電磁界(虹色の円)のノイズを絞ることで信号を強くし、検出速度を向上させる。
HAYSTAC実験のアーティストイメージ。マイクロ波空洞(金の円柱)がアクシオン(紫の粒子)と共振するよう周波数を調節している。これが電磁界(虹色の円)のノイズを絞ることで信号を強くし、検出速度を向上させる。 / Credit:Lehnert Group and Steven,Burrows,UC Berkeley
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暗黒物質候補である未知の素粒子「アクシオン」はどうやって探しているの? 検索速度を上げる新技術と共に解説 (3/3)

2024.06.19 Wednesday

2021.02.12 Friday

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邪魔なノイズを絞って検索速度を向上

アクシオンの検索を高速化させる研究は、2012年から着手されました。

ここで考えられた方法は、ノイズを可能な限り減らすという方法です。

しかし、2017年に最小のノイズは不確定性原理によって制限されてしまうということがわかりました。

アクシオン検出器は、2つの直交位相(アクシオンが存在する場合に生成される2つの異なる電磁波)を測定することでアクシオンを探しています。

アクシオンは直交振動として検出される。
アクシオンは直交振動として検出される。 / Credit:Luca Visinelli

この直交振動は、ノイズを減らしていくと不確定性原理によって、両方の正確な情報が得られなくなってしまうのです。

このためノイズの低減には量子限界が存在していて、HAYSTAC検出器の感度はすでにその量子限界に到達してしまったのです。

しかし、科学者は最近、「量子スクイーズ(quantum squeezing)」と呼ばれる新しい技術を発見しました。

ここでいうノイズは、数学的には小さなぼやけた円として考えることができます

この円形のノイズは一方の次元のノイズを増やすことを犠牲にして、もう一方の次元のノイズを減らしていくことができるのです。

つまり円形の輪っかをぐいっと押しつぶすようなイメージです。

実験のアーティスト画像で描かれたノイズのイメージ。
実験のアーティスト画像で描かれたノイズのイメージ。 / Credit:Lehnert Group and Steven,Burrows,UC Berkeley

さきほど、アクシオンの波は直交振動だといいましたが、アクシオンの波を隠す円形のノイズの片方の次元を潰すことで、その次元の直行振動を検出しやすくすることができるのです。

これは検出の帯域幅を広げるように機能します。

つまり目的のラジオ局が88.3MHzだったとすると、88.1MHzでもそこで流れている音楽が拾えるというイメージです。

ラジオ放送はたくさんありますが、現在探しているアクシオンの信号は1つだけです。1度に多くの周波数をカバーできればその分より高速で検索が行えるわけです。

今回の研究では、この方法によってHAYSTACの帯域幅を2倍にし、アクシオンの検索速度が2倍に向上したのだといいます。

もちろんこれだけではまだ十分とは言えません。

しかし、チームはすでに検索速度を4倍に加速させる改善に取り組んでいて、2~3年のうちには20倍まで向上させる可能性があると語っています。

実験のセットアップをする研究チーム。
実験のセットアップをする研究チーム。 / Credit:Sid Cahn,University of Yale

こうしたチームの努力が実を結び、アクシオンが初めて検出されたというニュースを聞く日は、近いのかもしれません。

そしてそのとき、人類は宇宙の大部分を満たす暗黒物質の正体を知ることになるのでしょうか?

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