HAYSTAC実験のアーティストイメージ。マイクロ波空洞(金の円柱)がアクシオン(紫の粒子)と共振するよう周波数を調節している。これが電磁界(虹色の円)のノイズを絞ることで信号を強くし、検出速度を向上させる。
HAYSTAC実験のアーティストイメージ。マイクロ波空洞(金の円柱)がアクシオン(紫の粒子)と共振するよう周波数を調節している。これが電磁界(虹色の円)のノイズを絞ることで信号を強くし、検出速度を向上させる。 / Credit:Lehnert Group and Steven,Burrows,UC Berkeley
space

暗黒物質候補である未知の素粒子「アクシオン」はどうやって探しているの? 検索速度を上げる新技術と共に解説

2021.02.12 Friday
Researchers harness quantum weirdness to speed the search for dark matter https://news.berkeley.edu/2021/02/10/researchers-harness-quantum-weirdness-to-speed-the-search-for-dark-matter/ The search for dark matter gets a speed boost from quantum technology https://theconversation.com/the-search-for-dark-matter-gets-a-speed-boost-from-quantum-technology-153604
A quantum enhanced search for dark matter axions https://www.nature.com/articles/s41586-021-03226-7

天体物理学には、暗黒物質という未知の物質が宇宙全体の80%を構成しているという強力な証拠があります。

しかし、未だにその正体は特定されていません。

2月10日に科学雑誌『nature』に発表された新しい研究は、そんな暗黒物質候補の1つであるアクシオンを、これまでの2倍近い速度で探索する方法を開発したと報告しています。

未検出の素粒子の検出速度を向上させるというのは、どういう意味なのでしょう?

これは難しい素粒子の話ですが、研究チームの1人コロラド大学大学院生のベン・ブルーベイカー氏が、科学サイト「The Conversation」で初心者向けの明快な解説を行ってくれています。

ここでは、その記事に基づいて新たな研究の意義とアクシオンの検出について解説していきます。

未知の素粒子アクシオン

未だ発見されていない未知の素粒子は数多くある。
未だ発見されていない未知の素粒子は数多くある。 / Credit:canva

銀河が集まる巨大な銀河団は、見えない物質の引力がなければ説明できない動きをしています。

科学者たちは、この見えない余分な引力の発生源に暗黒物質という名を与えましたが、理論上宇宙の85%を占めるこの暗黒物質が何なのかは未だにわかっていません。

理論物理学では、暗黒物質の候補となりそうな数十の新しい素粒子が提案されていますが、いずれも本当に存在するかはまだわかりません。

そこで実験物理学者たちはどれが正しいか、さまざまな検出器を構築して未知の素粒子の探索を試みているのです。

今回の研究は、そんな未知の素粒子の1つアクシオン(Axion)に着目したものです。

アクシオンは電子の数十億から数兆分の1という信じられないほど小さい素粒子で、ビッグバンの際に膨大な数が生成されたと考えられています

現在、暗黒物質の候補と考えられている他の粒子には、アクシオンよりはるかに重いWIMP(冷たい暗黒物質)がありますが、これは1cm3 あたり数個という密度だと推定されています。

しかし、アクシオンは1cm3 あたり100兆もの密度があると推定されているのです。

そのため、アクシオンは非常に軽いですが暗黒物質を説明するための十分な候補となっています。

チームはこのアクシオンを見つけ出すために、HAYSTACという検出器を構築して実験を行っていますが、十年以上に渡る努力にも関わらず、未だに発見には至っていません。

その原因は、すでにこの装置が量子限界に達しているからだといいます。

ではHAYSTACはどういう方法でアクシオンを探しているのでしょう?

次ページアクシオンの捜索はラジオのチューニングみたいなもの

<

1

2

3

>

物理学physics

もっと見る

Special

注目pick up !!