ブタの臓器移植の問題点とは?
全米臓器分配ネットワーク(UNOS)によると、アメリカでは現在、10万人以上の患者が臓器移植を待っている状態にあり、うち9万人が腎臓の移植を希望しています。
腎臓移植のリミットは3〜5年で、それを過ぎた患者が1日に平均13人ずつ亡くなっています。
臓器不足の問題が急を要する中、模索されているのが、動物からの移植です。
動物を医療に用いる試みは、17世紀に動物の血液を輸血に使おうとして失敗したことに始まります。
20世紀に入ると、外科医がヒヒから人間に臓器移植する手術も行っています。
しかし、なかなか成功せず、世間を騒がせたため、外科医は霊長類からブタに目を向けました。
ブタには、サルやヒヒなどの霊長類にはない利点があります。
たとえば、ブタは子を産む数が多く、妊娠期間も短いため、短いスパンで多くの臓器が入手できます。
その上、臓器のサイズが私たちと同じくらいであり、生理的な機能も似ています。
また、世界中で食用ブタが生産されているため、サルと違って、倫理的な問題が起きにくいのも利点のひとつかもしれません。
一方で、難点もいくつかあります。
中でも最大の壁は、ブタの細胞に含まれる糖分子が、ヒトの免疫系に激しい拒絶反応を起こさせることです。
研究チームはこれを回避するべく、ブタを遺伝子操作し、拒絶反応を引き起こす糖分子をコードする遺伝子を欠損させました。
遺伝子操作を手がけたのは、移植用のブタ臓器の開発に取り組むアメリカのバイオテクノロジー企業・Revivicor社です。
同社は、施設で厳重に管理された状態で、100頭以上のブタを飼育しています。
これらのブタは、ヒトの免疫系からの即時攻撃を誘発する糖の一種「α-Gal(アルファ・ガル)」を産生する遺伝子を欠損しています。
昨年12月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、これらの遺伝子改変ブタを食用および医療用として安全であると承認しました。
さて、実際の移植手術は、どのようにして行われたのでしょうか。